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日本脳ドック学会により未破裂脳動脈瘤診療のガイドラインが出版されています。

現在日本では未破裂脳動脈瘤悉皆調査(UCAS Japan)が日本脳神経外科学会の事業として進められています。また同調査の参加施設を中心に厚生労働省研究班が構築され未破裂脳動脈瘤を持つ患者の生活の質を含めた詳細な検討(UCASII)や小型脳動脈瘤の観察研究(SUAVe)がなされています。

2010年SUAVe研究の結果がStroke誌に掲載され、5mm未満の未破裂脳動脈瘤の破裂の率は約0。5%であり比較的低いこと、多発性の瘤、高血圧を有する人、また若い人の瘤は拡大しやすく破裂しやすいという結果が報告されました。5mm 未満の脳動脈瘤の治療適応に関しては慎重な対応が必要であることが示されました。

今後スタチンなどの薬剤負荷が動脈瘤破裂を防止するかについて無作為比較試験などの計画も立てられています。このような調査の進行によって、未破裂脳動脈瘤の自然歴や治療効果が示され、より精密な治療指針を立てることができるようになると考えられています。

以下に脳ドックのガイドライン2008より未破裂脳動脈瘤への対応の項をまとめます。

  1. 未破裂脳動脈瘤が発見された場合、年齢・健康状態などの患者の背景因子、個々の動脈瘤のサイズや部位・形状など病変の特徴から推測される自然歴、および施設や術者の治療成績を勘案して、治療の適応を検討することが推奨される。なお、治療の適否や方針は十分なインフォームド・コンセントを経て決定されることを推奨する。
  2. 未破裂脳動脈瘤診断により患者がうつ症状・不安をきたすことがあるため、インフォームド・コンセントに際してはこの点への配慮が重要である。うつ症状や不安が強度の場合はカウンセリングを推奨する。
  3. 患者および医師のリスクコミュニケーションがうまく構築できない場合、他医師または他施設によるセカンドオピニオンが推奨される。
  4. 破裂率や合併症のリスクに基づいた治療の有用性の分析ないし費用効果分析は総合的評価であり、個々の動脈瘤に関する評価ができない。単純化された費用効果分析に基づいて治療方針を決定すべきではない。
  5. 未破裂脳動脈瘤の自然歴(破裂リスク)から考察すれば、原則として患者の余命が10~15年以上ある場合に、下記の病変について治療を検討することが推奨される。
    (1)5~7mm以上の未破裂脳動脈瘤
    (2)上記未満であっても、
     ・A. 症候性の脳動脈瘤
     ・B. 後方循環、前交通動脈、および内頚動脈-後交通動脈部などの部位に存在する脳動脈瘤
     ・C. Dome/neck aspect比が大きい・不整形・ブレブを有するなどの形態的特徴をもつ脳動脈瘤
  6. 治療成績の評価にあたっては、単純なアウトカムスケールのみではなく、脳高次機能や生活の質評価などを併用して術前・術後の評価を行うことが推奨される。
  7. 治療に当たっては、治療施設の成績を提示しインフォームド・コンセントを得る事が推奨される。
  8. 開頭手術や血管内治療などの外科的治療を行わず経過観察する場合は、喫煙・大量の飲酒をさけ、高血圧を治療する。経過観察する場合は半年から1年毎の画像による経過観察をおこなうことが推奨される。
  9. 経過観察にて瘤の拡大や変形、症状の変化が明らかとなった場合、治療に関して再度評価を行うことが推奨される。
  10. 血管内治療においては、治療後も不完全閉塞や再発などについて経過を観察することが推奨される。
  11. 開頭クリッピングの術後においても、長期間経過を追跡することが推奨される。

参考文献・ホームページ

  • 脳ドックのガイドライン2008: 
    http://www.snh.or.jp/jsbd/pdf/guideline2008.pdf
  • 日本未破裂脳動脈瘤悉皆調査の公開ホームページ(UCAS Japan) 
    http://ucas-j.umin.ac.jp/
  • くも膜下出血ガイドライン
  • 日本脳神経外科学会のホームページ
    http://jns.umin.ac.jp/
  • 国際未破裂脳動脈瘤(ISUIA)のホームページ(英語)http://mayoresearch.mayo.edu/mayo/research/ISUIA/
  • Bederson JB, et al. Recommendations for the management of patients with unruptured intracranial aneurysms: A statement for healthcare professionals from the stroke council of the american heart association. Circulation. 2000;102:2300-2308
  • Unruptured intracranial aneurysms–risk of rupture and risks of surgical intervention. International study of unruptured intracranial aneurysms investigators. N Engl J Med. 1998;339:1725-1733.
  • Unruptured intracranial aneurysms: natural history, clinical outcome, and risks of surgical and endovascular treatment. The Lancet 362:103-110, 2003
  • Sonobe M, Yamazaki T, Yonekura M, Kikuchi H: Small unruptured intracranial aneurysm verification study: SUAVe study, Japan. Stroke 41:1969-1977, 2010.