薬物療法、手術、リハビリテーションがあります。それぞれの脳梗塞の種類別に現在行われている主な治療方法を説明します。
1)アテローム血栓症
内科治療
抗血小板剤 (注射薬;オザグレルナトリウム、 内服薬;アスピリン、 クロピドグレル、 シロスタゾールなど) |
活性化された血小板が血管壁に付着しさらに狭窄が進行していったり、壁に付着した血小板が剥がれて血管に流れてその先の血管をつめることがありこれを防ぐために用います。 |
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抗凝固剤 (注射薬;アルガトロバン) |
壁が不整なところに血液が固まらないようにするものです。脳の血液が足りない部分を生かすことができます。 |
血栓溶解薬 (注射薬;アルテプラーゼ、 ウロキナーゼ) |
心原性脳塞栓症の項で説明します。 |
生活習慣病の治療 | この病態は高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を合併していることが多くこの治療も重要です。 |
手術治療
血管吻合術(バイパス術)
つまった脳血管のさらに先の血管に頭皮を走る血管を剥がしてつなぐ手術です。吻合した血管から血流が新たに確保できるため再発を抑えることができるというものです。最近日本で行われた研究でその有用性(再発予防)が証明されました。
(JET study; Japanese EC-IC bypass trial study)
<脳血管造影検査>
頚部内頸動脈内膜剥離術
頚部の内頸動脈に狭窄がある場合、厚くなった壁(内膜)をくりぬく手術です。症状がある場合70%以上細くなっている症例にはこの手術を行うことにより薬だけで治療した症例より再発が少ないことが証明されています。
頚部内頸動脈ステント
金属製のメッシュ状の筒を狭窄部に留置して拡げる治療です。
心原性脳塞栓症
内科治療
抗凝固剤(注射薬;ヘパリン、内服薬;ワーファリン・プラザキサ)
心臓の中に血のかたまり(血栓)をできにくくするために用います。ただし量が多すぎると出血しやすくなり皮下出血、鼻血、血尿、血便などの問題を起こすことがあり、適正量をきびしくチェックする必要があります。一般的には採血をしてINR(international normalized ratio)をチェックします。この薬を服用していない人は1,服用量が多くなるとこの値は増えていきます。2~3の間(高齢者は1.6~2.6)の間にコントロールします。
2011年3月直接トロンビン阻害薬ダビガトラン(商品名 プラザキサ)が承認されました。抗凝固作用と出血合併症をきたす投与量・効果度に差が大きく、血液凝固能のモニタリングを必要とせず、これまでワーファリン服用の場合禁忌とされていたクロレラや納豆などの食事制限もない利便性の高い薬剤です。ただし、2~3時間で即効性があり、半減期12~7時間という薬剤であり一日2回欠かさず服用する必要があること、また薬価はワーファリンの約5倍となっています。主治医とよく相談して、服薬内容を検討する必要があります。
血栓溶解薬(注射薬;アルテプラーゼ、ウロキナーゼ)
血栓もしくは塞栓を直接溶かすための薬で、2005年から日本でも、脳梗塞発症3時間以内に治療可能な患者に対してアルテプラーゼ(rt-PA)の静脈注射の使用が認められました。このrt-PAを使用することで、詰まった血管をいち早く再開通させ、脳に血液を再び送ることが可能となり、脳梗塞後の後遺症の程度が著明に少なくなることが証明されています。しかしその効果の反面、脳内出血を生じる危険性も高いため、治療を受ける場合には担当医の説明をきちんと聞いて、合併症についても理解した上で、同意をする必要があります。
手術治療
再開通
アルテプラーゼが使用できなかったり無効な場合の方法としてカテーテル治療があります。血栓をつかまえて除去するデバイスや血栓を吸引するデバイスが許可され使用されています。
3)ラクナ梗塞
内科治療
アテローム血栓症に準じた抗血小板剤を用います。なおこの病態は高血圧との関連がわかっており降圧剤が重要な役割をします。とくにラクナ梗塞の項で述べた微小出血の症例においては抗血小板剤よりも降圧剤の意義が大きいと言えます。
またすべての病態において脳保護剤(注射薬;エダラボン)が使用されることもあります。これは死に陥った脳細胞から放出される活性酸素が周りの生きている脳に悪さをすると言われており、この活性酸素を除去する薬剤です。本邦で開発された薬剤です。
4)リハビリテーション
手足の麻痺や言語障害などを認めた場合、その機能回復のためリハビリを行います。現在では一日でも早く開始することが望ましいと言われています。理学療法・作業療法・言語療法などがあります。