令和5年度 香川県立中央病院 病院情報の公表

病院指標

  1. 年齢階級別退院患者数
  2. 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  3. 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
  4. 成人市中肺炎の重症度別患者数等
  5. 脳梗塞の患者数等
  6. 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  7. その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)

医療の質指標

  1. リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率
  2. 血液培養2セット実施率
  3. 広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率
年齢階級別退院患者数ファイルをダウンロード
年齢区分 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~
患者数 611 166 204 392 763 1,336 1,936 3,363 2,008 414
当院は高度急性期病院および地域医療支援病院として、地域の皆さんに質の高い医療を幅広い年齢層の患者さんに提供しています。全体で見ると、60歳以上に占める割合が全体の約7割となっており、高齢者の入院が多くなっています。
年齢ごとに疾患の構成を見てみると、10歳未満は呼吸器系疾患や新生児疾患が多く、10歳代では外傷性疾患が最も多く、次に腎・尿路疾患となっています。20歳代から30歳代を中心に女性生殖器系疾患や産褥期疾患が多くなっています。また、40歳代でも女性生殖器系疾患が多く見られますが、次いで消化器系疾患も増加しています。50歳代から80歳代にかけて消化器系疾患、循環器系疾患、腎・尿路系疾患が上位を占め、90歳以上では加えて外傷疾患、神経系疾患も増加しています。
診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)ファイルをダウンロード
消化器内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060100xx01xxxx 小腸大腸の良性疾患(良性腫瘍を含む) 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術等 207 5.24 2.61 0.00% 71.91
060020xx04xxxx 胃の悪性腫瘍 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術等 176 8.09 7.61 0.57% 73.61
060340xx03x00x 胆管(肝内外)結石、胆管炎 内視鏡的胆道ステント留置術等 処置2なし 副傷病なし 129 7.09 8.75 1.55% 72.74
060090xx02xxxx 胃の良性腫瘍 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術等・内視鏡的消化管止血術等 62 5.77 6.14 0.00% 70.73
060210xx99000x ヘルニアの記載のない腸閉塞 手術なし 処置1なし 処置2なし 副傷病なし 32 7.66 8.95 12.50% 75.19
消化器内科では、専門医が胃癌、大腸癌、食道癌の内視鏡手術を積極的に行っており、完全切除率も極めて高いです。多くの手術を行う必要性のため、週末入院月曜手術の必要性もあるため、胃癌の内視鏡手術の在院日数がやや長いことが今後の課題です。また、胆管の結石や感染症は重症化する場合も多く、広いエリアから緊急内視鏡処置を受け入れています。処置を速やかに行い、地域に継続加療をお願いするため、転院率が高くなっています。消化器癌に対する抗がん剤治療の専門医が、外科内科の癌患者さんに積極的に治療を行っています。重症の腸閉塞患者の緊急処置も積極的に受け入れ、改善後は、周辺医療機関と連携して在宅復帰を支援しています。
肝臓内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060050xx97x0xx 肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む) その他手術あり 処置2なし 98 10.33 10.24 4.08% 75.05
060050xx030xxx 肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む) 肝悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法等 処置1なし 24 7.33 7.38 0.00% 74.17
060050xx99000x 肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む) 手術なし 処置1なし 処置2なし 副傷病なし 24 6.83 8.22 0.00% 71.42
060300xx99x00x 肝硬変(胆汁性肝硬変を含む) 手術なし 処置2なし 副傷病なし 21 12.29 10.88 9.52% 64.43
060270xx99x0xx 劇症肝炎、急性肝不全、急性肝炎 手術なし 処置2なし - - 11.77 - -
肝臓内科の入院患者さんで一番多い疾患は肝細胞癌です。肝細胞癌の多くは慢性の肝疾患に発生してきますので、肝臓の線維化が進んだ慢性肝炎や肝硬変では定期的にエコー/CT/MRIなどの画像検査を実施することが必要です。線維化の程度は、血小板数減少、M2BPGi/ヒアルロン酸/Fib4indexなどの血液検査、ファイブロスキャンで肝臓の脂肪含量や硬度を測定し総合的に判断しています。肝疾患の原因や進行度を詳細に把握するためには肝生検入院(1泊2日)を行っています。肝細胞癌に対する治療方針は肝癌のステージ、大きさと個数などの腫瘍の状態と肝予備能から最新の治療ガイドラインに沿って患者さんに適した治療を行っています。肝細胞癌は年率20%の再発があるため、初回治療時はもちろん再発治療時においても、外科切除、内科的局所治療、薬物治療のどれが最適であるかを検討し治療を選択することが重要です。当院では切除の適応がない場合、肝動脈化学塞栓術(TACE)の適応がある場合はTACEを行い、その後に焼灼療法の適応がある場合には焼灼治療を追加することが多いので肝細胞癌の治療としてTACEが最も多い手術法となっています。経皮的な焼灼療法としてはラジオ波焼灼術(RFA)、マイクロ波焼灼術、症例数は少ないですがエタノール局注療法も行っています。切除不能、TACE不応・不能・不適な肝細胞癌、RFAの適応外の場合は薬物治療(分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬)を行いますが、治療が奏効し局所治療の効果が期待できるように小さくなった場合は根治目的で切除、TACEやRFAなどを実施しています。門脈に肝癌が浸潤している場合には放射線治療を行うこともあります。
肝硬変症の合併症としては肝性脳症と難治性の腹水があります。肝性脳症の治療においては、肝性脳症治療のためのクリニカルパスを作成して食事指導や生活指導、服薬管理を行い、また入院中および自宅での食事・排便・羽ばたき振戦の有無、服薬状況などを患者さんやご家族が簡便かつ的確に記載できる様な管理ノートをお渡しています。この取り組みで日常でわかりにくい体調の変化も早期に把握しやすくなり、入退院の回数が減少してきました。
難治性腹水に対しては穿刺排液した腹水を濾過と濃縮後に再静注する腹水濾過再静注法(CART)を実施しています。
呼吸器内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040040xx99040x 肺の悪性腫瘍 手術なし 処置1なし 化学療法ありかつ放射線療法なし 副傷病なし 48 7.88 8.33 2.08% 73.90
040110xxxxx0xx 間質性肺炎 処置2なし 36 24.03 18.65 25.00% 76.97
040040xx99200x 肺の悪性腫瘍 手術なし 経気管肺生検法等 処置2なし 副傷病なし 25 3.00 2.98 4.00% 68.56
040040xx99041x 肺の悪性腫瘍 手術なし 処置1なし 化学療法ありかつ放射線療法なし 肺炎等等 23 14.13 13.90 0.00% 74.00
040040xx99060x 肺の悪性腫瘍 手術なし 処置1なし ザーコリ等 副傷病なし 22 13.09 13.89 9.09% 73.95
呼吸器内科では、肺癌(肺の悪性腫瘍)の化学療法の患者さんが最も多くなっております。近年、薬物療法の進歩により分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬による治療が増加しています。
当科では肺癌の化学療法を行う場合、原則初回治療は入院で効果・副作用を評価し、2回目からは外来通院センターで治療を行っています。
間質性肺炎の急性増悪による呼吸不全に対し、酸素療法・人工呼吸療法、ステロイド療法などを行っています。
糖尿病内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
10007xxxxxx1xx 2型糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシスを除く) インスリン製剤(注射薬に限る) 21 12.10 13.99 0.00% 66.33
10007xxxxxx0xx 2型糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシスを除く) 処置2なし 14 11.93 10.66 0.00% 73.21
100040xxxxx00x 糖尿病性ケトアシドーシス、非ケトン昏睡 処置2なし 副傷病なし 11 9.00 13.15 0.00% 49.82
10006xxxxxx0xx 1型糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシスを除く) 処置2なし - - 8.51 - -
100040xxxxx10x 糖尿病性ケトアシドーシス、非ケトン昏睡 中心静脈注射等 副傷病なし - - 18.91 - -
糖尿病・内分泌内科において、2023年4月1日~2024年3月31日までのDPC上位5位の退院患者さんは、1型糖尿病10例、2型糖尿病40例でした。また重篤な代謝障害(高血糖高浸透圧症候群や糖尿病性ケトアシドーシス)は12例で、内訳は1型糖尿病7例 2型糖尿病5例でした。
血液内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
130030xx99x3xx 非ホジキンリンパ腫 手術なし 化学療法ありかつ放射線療法なし 37 8.97 14.70 0.00% 67.95
130030xx99x9xx 非ホジキンリンパ腫 手術なし アドセトリス等 26 12.12 12.88 0.00% 69.69
130030xx97x3xx 非ホジキンリンパ腫 手術あり 化学療法ありかつ放射線療法なし 26 20.58 28.89 0.00% 67.19
130030xx99x4xx 非ホジキンリンパ腫 手術なし リツキサン 22 9.73 9.62 9.09% 78.14
130010xx97x2xx 急性白血病 手術あり 化学療法 20 28.80 36.19 0.00% 66.05
血液内科において、悪性リンパ腫の治療では、抗体製剤を抗がん剤と併用する場合が多く、初回投与時の薬剤アレルギー発現の可能性があります。そのため入院での投与が必要となり、アレルギーの観察やコントロール、また血球減少の経過観察を行っています。悪性リンパ腫の再発時や治療抵抗性となった場合は、救援療法(サルベージ療法)を行うため治療の度に入院する場合が多くなります。副傷病がある場合や造血幹細胞移植や輸血等の手術がある場合は入院期間が長期化する傾向があります。急性白血病に対する抗がん剤を用いた化学療法は、治療に伴う血球の減少が強いために入院で行う必要があります。無菌室を利用した治療となり、入院期間も長期間となります。高齢の急性骨髄性白血病の場合、従来の抗がん剤併用化学療法ではなく新規抗腫瘍剤のアザシチジン+ベネトクラクス併用療法が標準治療となり、施行件数が増えています。
腎臓内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110280xx9900xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 手術なし 処置1なし 処置2なし 31 11.81 11.49 12.90% 61.90
110280xx991xxx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 手術なし 経皮的腎生検法 26 3.04 6.44 0.00% 45.15
110260xx99x0xx ネフローゼ症候群 手術なし 処置2なし 18 18.83 19.94 5.56% 65.67
110280xx9901xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 手術なし 処置1なし 人工腎臓 15 13.47 13.81 6.67% 71.80
110280xx97x1xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 その他手術あり 人工腎臓 12 11.83 24.61 8.33% 73.50
腎臓内科では、蛋白尿/血尿の診断のための腎生検、腎炎/ネフローゼに対する免疫抑制療法を行っています。IgA腎症は10-20代に好発する慢性腎炎で早期に診断することで、治癒を目指した扁桃摘出術とステロイドパルス療法を組み合わせた治療を積極的に行っています。また高齢者に多い急速進行性腎炎や広く各年齢にみられるネフローゼ症候群に対してステロイドや免疫抑制剤、生物製剤を組み合わせた治療を行っており、良好な成績を収めています。慢性腎不全の食事療法や生活指導、透析療法選択のための教育入院を行っており、保存期腎機能を保持するのみではなく、透析療法の速やかな導入も行います。腹膜透析では50名以上の患者さんの治療を行っており全国有数の施設となっています。関節リウマチを中心とする膠原病や類縁疾患の早期診断、生物製剤や分子標的治療薬を用いた先端的な治療を行っています。
循環器内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050070xx01x0xx 頻脈性不整脈 経皮的カテーテル心筋焼灼術等 処置2なし 509 5.04 4.57 0.20% 67.42
050050xx0200xx 狭心症、慢性虚血性心疾患 経皮的冠動脈ステント留置術等 処置1なし 処置2なし 187 5.26 4.26 0.00% 71.34
050050xx9910x0 狭心症、慢性虚血性心疾患 手術なし 心臓カテーテル法による諸検査等 処置2なし 転院以外 143 2.95 3.05 0.70% 71.62
050210xx97000x 徐脈性不整脈 手術あり 処置1なし 処置2なし 副傷病なし 125 7.72 9.77 7.20% 79.86
050030xx97000x 急性心筋梗塞(続発性合併症を含む)、再発性心筋梗塞 その他手術あり 処置1なし 処置2なし 副傷病なし 96 13.64 11.54 5.21% 70.59
循環器内科でカテーテル治療数が多いのは、心房細動等不整脈に対するカテーテル治療を目的とした入院です。2番目に多い症例は狭心症に対しての冠動脈のカテーテル治療・ステント留置術となります。3番目に多い症例は、狭心症などに対する治療前・治療後の心臓カテーテル検査のための入院です。4番目に多い症例は房室ブロックなど徐脈性不整脈に対するペースメーカー植え込み手術のための入院です。5番目に多い症例は、心筋梗塞に対する緊急カテーテル治療です。
脳神経内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
010160xx99x00x パーキンソン病 手術なし 処置2なし 副傷病なし 20 9.65 18.24 10.00% 71.95
010110xxxxx4xx 免疫介在性・炎症性ニューロパチー ガンマグロブリン 20 11.70 16.97 20.00% 63.40
010230xx99x00x てんかん 手術なし 処置2なし 副傷病なし 14 7.64 7.20 21.43% 45.93
010155xxxxx2xx 運動ニューロン疾患等 エダラボン 12 12.75 17.56 0.00% 62.83
010160xx99x10x パーキンソン病 手術なし SPECT等 副傷病なし 12 13.25 19.56 16.67% 74.67
令和5年度に脳神経内科で入院治療を行った疾患で最も頻度が多かったのは、パーキンソン病と免疫介在性・炎症性ニューロパチーでした。パーキンソン病は主には外来で診断治療をしますが、パーキンソン病類似疾患との鑑別が難しい疾患なので、入院して精査する場合もあります。免疫介在性・炎症性ニューロパチーはギラン・バレー症候群や慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)など末梢神経の病気を含み、急性期の入院治療ではガンマグロブリンの点滴を行うことがあります。また、当院は救命センターを有する総合病院という役割を担っているため、脳神経内科ではてんかん発作で救急搬送される患者さんでの治療を担当することも多くなっています。運動ニューロン疾患とは筋萎縮性側索硬化症(ALS)をはじめとする運動神経が障害される疾患の総称です。当科ではALSの患者さんの診療に積極的に取り組んでいます。


小児科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040090xxxxxxxx 急性気管支炎、急性細気管支炎、下気道感染症(その他) 70 5.06 5.96 0.00% 1.56
060380xxxxx0xx ウイルス性腸炎 処置2なし 46 4.51 5.64 0.00% 4.76
040100xxxxx00x 喘息 処置2なし 副傷病なし 38 1.06 6.37 2.63% 5.82
040070xxxxx0xx インフルエンザ、ウイルス性肺炎 処置2なし 38 4.57 5.86 2.63% 4.00
140010x199x0xx 妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害 2500g以上 手術なし 処置2なし 36 4.90 6.07 0.00% 0.03
当院では年間500件近い出産があります。小児科は産婦人科と連携し、早産児や低出生体重児に限らず、少しでも異常のある新生児は未熟児室に入院頂き、十分な管理の下で必要な検査や治療をしています。入院中もご家族には未熟児室に何度でも入室して頂くことが可能で、児と積極的に接することが出来ます(現在はコロナウィルス流行のため入室回数を制限させていただいています)。
最近、食物アレルギーのある小児が増加しており、誤食によりアナフィラキシーを来した子どもも報道されています。一方で食物アレルギーがある児でも一生食事制限が必要なことは少なく、食事制限を長期間続けることは心身の発達にも望ましくありません。しかし、いつからどれだけの経口摂取ができるかは血液検査等からは判断が困難です。このため、十分にリスクに備えた上でごく少量ずつアレルゲンとなる食物を摂取して摂取可能か否かを判断する食物負荷試験が近年増加しており、当科でも積極的に行っています。
インフルエンザやウィルス性肺炎はもちろんのこと、急性気管支炎・細気管支炎の多くもウィルス性の感染です。特に細気管支炎の大半はRSウィルス感染により発症し、呼吸困難を来すことも多い疾患です。喘鳴(ゼイゼイ)や咳嗽から多呼吸、陥没呼吸等を来たし、放置すれば場合によっては死に至ることもあります。特に早産で出生した乳児や基礎疾患のある乳幼児はハイリスクと考えられています。特効薬はありませんが、急性期の呼吸状態によっては点滴補液や酸素投与などが必要になるなど十分な入院管理が必要です。その他のウィルス性肺炎等においても同様で、インフルエンザ以外の大半のウィルス疾患に特異的治療薬はないため、症状が改善するまで呼吸をはじめ、全身状態を維持することが治療の中心になります。
なおRSウィルスの流行時期は従来冬季でしたが、近年は夏季に大流行することもあります。ウィルス性腸炎は、ノロウィルス、ロタウィルスなどを代表とした様々なウィルスが消化器系に入ることで発症する感染症です。嘔吐や下痢が中心で、発熱や腹痛も伴うことが多いです。特に水分摂取ができない乳幼児は急激に脱水になるため注意しなければなりません。脱水となると点滴加療が必要となり、回復するまで入院が必要になることもあります。日頃から手洗いを心がけ周囲の流行状況に気をつけてください。腸炎症状があるときは、無理に固形物を摂取させることより、電解質や糖分を含む水分を少量頻回に摂取させてあげてください。摂取できず尿量が減ってくるなら早期にかかりつけ等小児科受診してください。ウィルス性腸炎は稀に腸重積という腸閉塞を来すことがあり、乳幼児で嘔吐反復や苺状の血便呈した場合は早期に鑑別が必要です。なお現在ロタウィルスに対しては内服のワクチンが定期接種となっており、症状を軽減させるのに有効と考えられています。
消化器外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060035xx010x0x 結腸(虫垂を含む)の悪性腫瘍 結腸切除術等 処置1なし 副傷病なし 65 16.20 15.12 3.08% 71.85
060330xx02xxxx 胆嚢疾患(胆嚢結石など) 胆嚢摘出術等 63 5.94 5.98 0.00% 63.30
060020xx02xxxx 胃の悪性腫瘍 胃切除術等 62 13.95 18.01 1.61% 69.77
060160x001xxxx 鼠径ヘルニア 15歳以上 鼠径ヘルニア手術等 52 4.85 4.55 0.00% 74.90
060050xx02xxxx 肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む) 腹腔鏡下肝切除術 部分切除 単回の切除によるもの等 38 11.68 14.28 0.00% 67.24
消化器外科では、消化器悪性腫瘍(がん等)の手術を多数行っており、手術技術において高い評価を受けています。年々、ロボット支援下手術の数も増えています。進行した癌の診療では、消化器内科、腫瘍内科、放射線科などと連携して、個々の患者様に最適な治療を提供できるよう心がけています。良性疾患については、胆石、ヘルニアといった疾患に加えて、最近増えている炎症性腸疾患についても消化器内科と共に治療を行っています。DPCコード分類では同じ手術術式の多い疾患が拾い出されるため、上の表では胆石、ヘルニアといった良性疾患の症例数も多くなっています。悪性腫瘍はDPC分類では部位、術式などによって細分されるため、1つの群あたりの症例数は少なくなり上位5位に入りにくいですが、実際には当科では、悪性腫瘍の手術を中心に行っています。
呼吸器外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040040xx97x00x 肺の悪性腫瘍 その他手術あり 処置2なし 副傷病なし 122 8.25 9.89 0.00% 70.11
040200xx99x00x 気胸 手術なし 処置2なし 副傷病なし 20 7.20 9.17 5.00% 46.10
040040xx99040x 肺の悪性腫瘍 手術なし 処置1なし 化学療法ありかつ放射線療法なし 副傷病なし 19 8.63 8.33 0.00% 62.05
040040xx97x01x 肺の悪性腫瘍 その他手術あり 処置2なし 肺炎等等 11 10.73 17.21 0.00% 70.36
160400xx99x0xx 胸郭・横隔膜損傷 手術なし 処置2なし - - 9.36 - -
呼吸器外科領域において治療対象として最も多い疾患は肺癌です。新型コロナウイルス感染症の影響が遷延し、診断の遅れが危惧されていますが、呼吸器外科においては依然として肺癌が入院患者数、手術数の大部分を占めています。当院は県の中核施設として積極的に最新の肺癌治療手技を取り入れています。2003年には先進的に完全胸腔鏡下手術を導入し、2016年にはロボット支援下肺癌手術を、さらに2021年にはロボット支援下縦隔腫瘍手術や単孔式胸腔鏡手術を始めています。また、肺癌に対しては集学的治療がしばしば必要となりますが、当院では定位照射などの放射線治療に関しては放射線科医と、化学療法や分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬などの新規薬物治療については呼吸器内科医・腫瘍内科医と連携して診療に当たっています。
急に肺に穴が開いて、肺がしぼんでしまう疾患を「気胸」と呼びます。気胸の治療法にはドレナージ・気管支鏡下気管支充填術・胸膜癒着療法・胸腔鏡下手術などがあり、それぞれの病態に応じてそれらの治療を使い分けます。また、続発性気胸は肺気腫や間質性肺炎などの疾患を合併することが多く、呼吸器内科と協同して治療を行うことが必要とされます。気胸は緊急を要する疾患でもあるため、当院では呼吸器外科と呼吸器内科が協力して2020年より「気胸センター」を設立し、近隣の医療機関からの紹介に迅速に対応できる体制を整備しています。
乳腺・内分泌外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
090010xx010xxx 乳房の悪性腫瘍 乳腺悪性腫瘍手術 乳房切除術等 処置1なし 99 11.88 9.88 1.01% 60.46
090010xx02xxxx 乳房の悪性腫瘍 乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わない) 77 8.78 5.64 0.00% 59.74
090010xx99x40x 乳房の悪性腫瘍 手術なし シクロホスファミド+塩酸エピルビシンあり等 副傷病なし 36 3.11 3.51 0.00% 51.64
090010xx99x30x 乳房の悪性腫瘍 手術なし 化学療法ありかつ放射線療法なし 副傷病なし 19 3.79 5.68 0.00% 51.37
090010xx99x80x 乳房の悪性腫瘍 手術なし パージェタ 副傷病なし 16 3.38 3.55 0.00% 60.13
乳癌手術では、整容性の高い乳房温存手術を基本術式としています。腫瘍の大きい症例に対しては、術前化学療法を施行し、腫瘍を小さくしてから温存手術をおこなうこともあります。しかし残念ながら、病状により乳腺全摘術を選択せざるを得ない場合もあります。その場合は、術前より形成外科医と相談し、希望があれば乳房再建手術もおこなっています。再建方法としては、①人工乳房による再建②広背筋皮弁による再建③血管吻合をともなった腹部遊離皮弁による乳房再建④腹直筋皮弁による乳房再建をおこなえるようにしています。
心臓血管外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050161xx9900xx 大動脈解離 手術なし 処置1なし 処置2なし 30 13.00 16.49 10.00% 73.70
050163xx03x0xx 非破裂性大動脈瘤、腸骨動脈瘤 ステントグラフト内挿術等 処置2なし 28 8.04 10.42 3.57% 79.07
050080xx0101xx 弁膜症(連合弁膜症を含む) 弁置換術等 処置1なし 中心静脈注射等 22 17.59 21.53 0.00% 65.14
050161xx97x1xx 大動脈解離 その他手術あり 中心静脈注射等 17 26.35 28.09 41.18% 68.18
050163xx02x0xx 非破裂性大動脈瘤、腸骨動脈瘤 大動脈瘤切除術 腹部大動脈等 処置2なし - - 15.33 - -
急性大動脈解離では、心臓に近い上行大動脈に解離が及んでいるStanford A型の場合は破裂の危険が高いためほとんどが緊急手術を必要とし、上行大動脈に解離が及んでいないB型の場合は通常手術を行わず薬物で治療しています。弁膜症は社会の高齢化に伴い増加している疾患で、特に心臓の出口にある大動脈弁が狭くなる大動脈弁狭窄症が最も多くなっています。治療は外科的手術ですが、年齢や条件によりカテーテルによる大動脈弁置換も循環器内科が中心となって行っています。心臓(左心室)の入り口にある僧帽弁は、きちんと閉じない閉鎖不全症が主で、自己弁を温存する弁形成術を中心に手術を行っており、また適応症例では右小切開手術を行っています。高齢化に伴い大動脈瘤の患者さんは増加しており、前年度は腹部大動脈瘤が最も多く、体に負担の少ないステントグラフト治療を主に行っています。動脈瘤の形態や患者さんの状態に応じて開腹術を行う場合もありますが、頻度は少なくなっています。
脳神経外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
160100xx97x00x 頭蓋・頭蓋内損傷 その他手術あり 処置2なし 副傷病なし 44 11.91 9.88 29.55% 81.52
010060x2990201 脳梗塞 3日以内かつJCS10未満 手術なし 処置1なし 脳血管疾患等リハ等 副傷病なし RankinScale0~2等 38 10.87 15.57 39.47% 76.95
010040x099000x 非外傷性頭蓋内血腫(非外傷性硬膜下血腫以外) JCS10未満 手術なし 処置1なし 処置2なし 副傷病なし 30 16.03 19.09 66.67% 68.23
010230xx99x00x てんかん 手術なし 処置2なし 副傷病なし 28 7.21 7.20 28.57% 68.14
160100xx99x00x 頭蓋・頭蓋内損傷 手術なし 処置2なし 副傷病なし 27 6.33 8.38 29.63% 60.04
脳神経外科で入院加療を行った患者さんで1番多いのは、頭を打って頭蓋骨の中に出血があり手術を必要とした患者さんです。意識障害などがある重症な患者さんに対しては急性期に頭を開けて脳の圧を逃がす手術を行っております。この場合入院期間も長くなり長期のリハビリテーションが必要です。また、発症後2週間程度して出血が確認された患者様の場合は,小さな孔を開けて血をぬくだけで良くなることが多く、短い入院期間で社会生活、日常生活に復帰することが可能です。
2番目に多い疾患は、急性期の脳梗塞です。ほとんどの患者さんが発症から24時間以内の急性期に救急入院されています。急性期には、血流を再開させるためにアルテプラーゼ(t-PA)の静脈投与や血管内手術による血栓回収療法などを行っています。入院期間は約2週間で過半数の患者さんが回復して自宅へ退院されますが、半数以上の患者さんは、さらなる機能回復を目指してリハビリテーションの継続のために転院されています。3番目に多い疾患は、脳出血の患者さんです。脳出血は高血圧が原因であることが多く、生活習慣の変化や高血圧への認識の高まりから近年減少傾向ですが,高齢化や高血圧治療を放置されている方を中心に引き続き啓蒙が必要です。手術が不要なことが多いですが、長期のリハビリテーションが必要となる人が多いのが現状です。
4番目に多い疾患は、てんかん発作等で緊急入院となる救急疾患です。脳卒中や脳腫瘍、頭部外傷後に発生する症候性てんかんが多く、投薬により回復します。
5番目に多い疾患は、外傷により脳内に損傷があった患者さんです。手術が必要なくても、高齢者では軽度の脳損傷でも認知機能の低下が認められることが多く、ご自宅へ帰れず在宅復帰に向けたリハビリテーションが必要となる方がいらっしゃいます。
整形外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
160800xx01xxxx 股関節・大腿近位の骨折 人工関節置換術等 108 18.24 25.50 82.41% 82.10
070341xx020xxx 脊柱管狭窄(脊椎症を含む) 頸部 椎弓切除術、椎弓形成術等 処置1なし 47 16.19 19.32 36.17% 69.43
070343xx01x0xx 脊柱管狭窄(脊椎症を含む) 腰部骨盤、不安定椎 脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術等 処置2なし 45 16.73 19.94 31.11% 69.76
070343xx97x0xx 脊柱管狭窄(脊椎症を含む) 腰部骨盤、不安定椎 その他手術あり 処置2なし 42 15.88 15.66 21.43% 71.57
160740xx01xx0x 肘関節周辺の骨折・脱臼 骨折観血的手術 肩甲骨、上腕、大腿等 副傷病なし 37 3.32 5.67 2.70% 15.78
令和5年度の手術件数は1521件でした。昨年度とほぼ同数です。その中でも昨年度に引き続き股関節の骨折に対する骨接合術や人工骨頭置換術が最多でした。第2位第3位第4位は脊椎の手術でした。第5位は上肢の骨折でした。
形成外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
070520xx97xxxx リンパ節、リンパ管の疾患 手術あり 11 8.82 8.23 0.00% 60.91
080010xxxx0xxx 膿皮症 処置1なし - - 12.88 - -
070010xx010xxx 骨軟部の良性腫瘍(脊椎脊髄を除く) 人工関節置換術等 処置1なし - - 5.14 - -
070570xx010xxx 瘢痕拘縮 瘢痕拘縮形成手術等 処置1なし - - 5.60 - -
020230xx97x0xx 眼瞼下垂 手術あり 処置2なし - - 2.82 - -
 形成外科では、顔や手足など身体の表面にできた傷や変形をきれいに治すことを主な目的としています。けが、顔の骨折、やけど、できもの、あざ、先天異常、治りにくい傷、がんの切除・再建および乳房再建などについて治療をおこなう外科系の専門領域です。入院治療を行う疾患としては、リンパ浮腫、蜂窩織炎(膿皮症)、骨軟部の良性腫瘍、瘢痕拘縮、眼瞼下垂が上位を占めています。リンパ浮腫とは、様々な原因によってリンパ液の流れが滞ることで起こる浮腫です。原因としては、日本では悪性腫瘍に対する手術や放射線治療および化学療法、あるいは外傷や感染による二次性(続発性)のものが圧倒的に多くなっています。早期に予防することで進行を遅らせることが可能です。軽症例では弾性包帯やストッキング、マッサージなどの保存的治療が有効です。進行例では保存的治療に加えて外科的治療が有効です。当院では保存的治療は専門のリンパ浮腫療法士や理学療法士が行っております。蜂窩織炎(膿皮症)とは、免疫力が低下している場合に皮膚の傷などから細菌が侵入し、皮膚とその下にある脂肪組織などに炎症を引き起こす病気です。形成外科では難治性皮膚潰瘍やリンパ浮腫からの蜂窩織炎での入院が大部分を占めています。軟部腫瘍とは、皮膚の下の軟部組織に出来たできもののことです。瘢痕拘縮とは深い傷や面積の広い傷が治った後の傷跡が、関節等で引きつれを起こすことがあり、手術治療が必要になることもあります。眼瞼下垂とは、主に加齢や外力(白内障手術後、コンタクトレンズの長期使用、アトピーなどで頻繁にまぶたをこするなど)が原因で起こる上まぶたが十分に上がらない状態のことです。
皮膚科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
080010xxxx0xxx 膿皮症 処置1なし 12 10.83 12.88 8.33% 66.92
080020xxxxxxxx 帯状疱疹 - - 9.29 - -
080006xx01x0xx 皮膚の悪性腫瘍(黒色腫以外) 皮膚悪性腫瘍切除術等 処置2なし - - 7.22 - -
080100xxxx0x0x 薬疹、中毒疹 処置1なし 副傷病なし - - 10.61 - -
080110xxxxx0xx 水疱症 処置2なし - - 28.98 - -
 皮膚科での入院治療では蜂窩織炎などの膿皮症が最も多くなっています。蜂窩織炎とは細菌による皮膚の感染症で、部位や状態などで点滴治療が望ましい場合は入院して治療を行います。帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルスによる感染症で、通常は内服治療を行いますが、免疫力の低い方やご高齢の方、衰弱の強い方などでは入院して点滴治療を行います。類天疱瘡、天疱瘡などの水疱症では、副腎皮質ホルモン内服・傷の手当てなどのために入院して治療を行い、反応が悪い場合にはグロブリン製剤の点滴や血漿交換が必要となる場合があります。また薬の副作用で皮疹が広範囲にでたり、他に発熱など全身の症状を伴う場合は、入院で免疫抑制剤を内服、グロブリン製剤の点滴などが必要となる場合もあります。
泌尿器科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110420xx02xxxx 水腎症等 経尿道的尿管ステント留置術等 143 2.18 4.02 2.80% 70.80
110080xx991xxx 前立腺の悪性腫瘍 手術なし 前立腺針生検法 133 2.03 2.44 0.00% 71.61
110070xx03x0xx 膀胱腫瘍 膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術 電解質溶液利用等 処置2なし 93 5.59 6.85 0.00% 72.86
11012xxx02xx0x 上部尿路疾患 経尿道的尿路結石除去術等 副傷病なし 48 5.90 5.22 4.17% 64.67
110080xx01xxxx 前立腺の悪性腫瘍 前立腺悪性腫瘍手術等 43 12.35 11.19 0.00% 70.19
 泌尿器科疾患における治療は、尿路性器癌(腎癌、腎盂尿管癌、膀胱癌、前立腺癌)に対するものが最も多くなっています。その内訳として、腎癌に対しては、腎温存のできない大きな癌に対しては、鏡視下腎摘除術を行っています。転移を有する進行癌に対しては、薬物療法や免疫療法を主体に治療を行っています。腎盂尿管癌に対しては、早期の場合、鏡視下での手術療法を行い、転移を有する進行癌に対しては全身抗癌剤治療、免疫療法を主体に治療を行っています。膀胱癌に対しては、早期の場合、内視鏡手術を中心に治療を行い、転移のない進行癌に対しては鏡視下膀胱全摘を、転移を有する進行癌に対しては全身抗癌剤治療、免疫療法を主体に治療を行っています。前立腺癌に対しては、早期の鏡視下手術を行い、転移・進行癌に対しては内分泌、放射線、全身抗癌剤治療などを行っています。当院での鏡視下手術はロボット支援手術が主流となっています。悪性腫瘍以外の疾患では、腎尿管結石に対しては、結石の大きさや状態に応じて、体外衝撃波結石破砕術や細径内視鏡下のレーザーを用いた砕石術を行っています。また、婦人科悪性疾患や消化器悪性疾患などに伴う尿管狭窄に対して  尿管ステント留置による尿路確保を積極的に行っています。
産科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
120180xx01xxxx 胎児及び胎児付属物の異常 帝王切開術等 22 8.64 9.34 0.00% 33.27
120260x001xxxx 分娩の異常 帝王切開術等 出血量2000mL未満 15 9.13 9.31 0.00% 32.73
120170x199xxxx 早産、切迫早産 34週未満 手術なし 13 28.54 20.10 15.38% 30.62
120140xxxxxxxx 流産 - - 2.43 - -
120050xx01x0xx 絨毛性疾患 子宮内膜掻爬術等 処置2なし - - 2.44 - -
 妊娠・出産はほとんどの場合が順調に経過しますが、母体や胎児、あるいは両方に突然問題が起こることがあります。妊娠初期にはさまざまな理由で10~15%が流産になるとされています。お腹の痛みと生理よりも多い出血があって、多くは自然流産となりますが、子宮内にとどまることがあり(稽留流産)、その場合は流産手術が必要になることがあります。お腹の強い張りや痛み、子宮の出口(頚管)が短かくなったり緩む・開くなど、放置していれば流産・早産となる可能性の高い状態を切迫流産・切迫早産と言い、自宅安静や張り止め薬を飲んでも症状の改善が認められない場合は、入院となり、さらなる安静と張り止め薬の点滴をして、流早産を防ぎます。母体の持病(高血圧、自己免疫疾患など)の悪化や妊娠に伴う合併症(妊娠高血圧症候群や妊娠性糖尿病など)が認められることもあります。小児科やその他の科と連携して周産期管理を行いますが、母体・胎児の状態や週数、また生まれた新生児の状態により、周産期センターのある、より高次施設へ母体搬送や新生児搬送をすることがあります。骨盤位や既往帝王切開後、胎盤の位置異常、多胎妊娠などは、帝王切開を行っています。妊娠経過が順調で、経腟分娩を行っていても、分娩が進行しなかったり、胎児にストレスが認められた場合は緊急で吸引分娩や帝王切開となる場合があります。帝王切開率は約25~30%となっています。お母さんにとって安心してお産ができ、元気な赤ちゃんを迎えていただけるよう、お手伝いしていきます。
婦人科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
12002xxx01x0xx 子宮頸・体部の悪性腫瘍 腹腔鏡下腟式子宮全摘術等 処置2なし 73 8.64 10.10 1.37% 56.07
12002xxx99x40x 子宮頸・体部の悪性腫瘍 手術なし 化学療法ありかつ放射線療法なし 副傷病なし 65 2.75 4.18 0.00% 59.23
120060xx02xxxx 子宮の良性腫瘍 腹腔鏡下腟式子宮全摘術等 57 5.84 5.93 0.00% 45.51
120010xx99x50x 卵巣・子宮附属器の悪性腫瘍 手術なし カルボプラチン+パクリタキセルあり等 副傷病なし 50 2.16 4.05 0.00% 60.80
12002xxx02x0xx 子宮頸・体部の悪性腫瘍 子宮頸部(腟部)切除術等 処置2なし 45 3.00 2.96 0.00% 38.44
 子宮体部の悪性腫瘍(いわゆる子宮体がん)は、発生頻度が年々増加しています。手術療法が治療の基本となります。術前の諸検査から、再発低リスクと推測される場合は、腹腔鏡下手術の適応がありますが、それ以外は開腹手術を要します。術後の摘出物病理診断の結果、あらためて再発リスクを評価し、再発中・高リスクの方には術後化学療法(いわゆる抗癌剤治療)を行います。子宮の良性疾患として代表的な子宮筋腫と子宮腺筋症ですが、症状や大きさによって手術療法を行います。いずれの疾患も、手術を受ける方の負担を少しでも軽減するために、可能な限り腹腔鏡下手術を実施しています。卵巣・卵管の悪性腫瘍の治療では、多くの場合、手術療法と化学療法(抗癌剤治療)の二本柱が重要な役割を果たします。化学療法の第1選択薬が、カルボプラチンとパクリタキセルの併用療法です。子宮頸部の悪性腫瘍(いわゆる子宮頸がん)は、ヒトパピローマウィルス(HPV)持続感染が発癌に関与します。人間ドックや一般健診で、前癌病変(子宮頸部上皮内腫瘍)とくに異型度3(高度異形成)の段階で早期発見できた場合は手術療法を行います。挙児希望のある年代の方では子宮頸部(腟部)切除術を選択することで、妊娠の可能性を残すことが出来ます。挙児希望が無い年代の方には、子宮全摘術をお勧めしていますが、この場合も腹腔鏡下手術が適応可能です。
眼科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
020110xx97xxx0 白内障、水晶体の疾患 手術あり 片眼 39 2.00 2.54 0.00% 74.69
020110xx97xxx1 白内障、水晶体の疾患 手術あり 両眼 17 2.00 4.46 0.00% 74.65
 眼科では手術目的の入院が主たるものとなります。最も多いのは白内障手術です。
耳鼻咽喉科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
030230xxxxxxxx 扁桃、アデノイドの慢性疾患 48 8.90 7.53 0.00% 27.00
030350xxxxxxxx 慢性副鼻腔炎 47 6.91 6.02 0.00% 54.49
030250xx991xxx 睡眠時無呼吸 手術なし 終夜睡眠ポリグラフィー(1及び2以外) 36 2.00 2.03 0.00% 68.92
030150xx97xxxx 耳・鼻・口腔・咽頭・大唾液腺の腫瘍 手術あり 22 7.05 6.75 0.00% 55.55
030430xx97xxxx 滲出性中耳炎、耳管炎、耳管閉塞 手術あり 16 3.00 3.23 0.00% 3.56
 耳鼻咽喉科で、1番目に多い扁桃・アデノイドの慢性疾患は、習慣性扁桃炎やIgA腎症、睡眠時無呼吸症候群の方に対して、症状改善目的で扁桃摘出やアデノイド切除を施行します。2番目に多い慢性副鼻腔炎は、投薬でのコントロールが困難な方に対して、症状改善目的で鼻の手術をします。3番目に多い睡眠時無呼吸は、睡眠時無呼吸症候群の方の原因、重症度を判断するため1泊2日で検査を施行しております。4番目に多い耳・鼻・口腔・咽頭・大唾液腺の腫瘍は、腫瘍に対して手術加療を施行しております。5番目に多い滲出性中耳炎、耳管炎、耳管閉塞は、滲出性中耳炎の小児に対して、鼓膜チューブ留置術を施行します。
初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数ファイルをダウンロード
初発 再発 病期分類
基準(※)
版数
Stage I Stage II Stage III Stage IV 不明
胃癌 209 30 22 14 - 38 1 8
大腸癌 100 43 72 55 30 66 1 8
乳癌 104 95 31 22 - 25 1 8,7
肺癌 92 45 41 63 25 104 1 8
肝癌 32 11 - - - 161 1 8
※ 1:UICC TNM分類,2:癌取扱い規約
【指標の説明】                                                        
 5大癌と呼ばれる胃癌、大腸癌、乳癌、肺癌、肝癌で入院された患者数を、UICC病期分類に基づくステージで集計しています。対象期間中に同一患者さんが複数回入院された場合も、1例としてカウントしています。
 UICC病期分類とは、国際対がん連合(Union for International Cancer Control, UICC)によって定められた、癌の大きさや進展度(T)、リンパ節転移(N)、遠隔転移の有無(M)の3つの要素によって0期~Ⅳ期に分類したもので、0期のものは集計対象外としています。数字が大きいほど「進行している癌」といえます。また入院中に検査結果が判明せず病期分類ができなかった場合は「不明」に分類しています。                                                         
 「初発」とは当院において癌の診断や初回治療を行った場合を指し、「再発」は診断した施設を問わず、癌治療後に再発・再燃または新たに遠隔転移が見つかった場合を指します。ただしDPCの入力マニュアル上、初回治療完了後に当院にて診療を行った場合は、再発・再燃・新たな遠隔転移がなくても「再発」に含まれるため、一部の患者さんは再発がない場合でも「再発」の中で集計されています。
 患者数が10未満の場合は、患者さんが特定される可能性があるため「-(ハイフン)」で表示しています。
【解説】
 令和5年度、悪性腫瘍で入院した患者さんは約3,500人で、このうち46%を5大癌が占めています。初発の内訳をみると大腸癌が最も多く、続いて胃癌、肺癌、乳癌、肝癌の順となっており、いずれの癌も早期癌から進行癌まで、幅広い病期を診療していることが分かります。
 胃癌はⅠ期の患者さんが多く、内視鏡的治療が多く行われています。
 大腸癌はⅠ~Ⅲ期と幅広い病期に対して、腹腔鏡による手術が行われています。この表にはありませんが、大腸癌の最も早期の病期である0期では、内視鏡的治療が多く行われています。また再発やStageⅣの患者さんが多いのも特徴です。
 乳癌はⅠ~Ⅱ期の患者さんが多く、乳房温存手術に化学療法や放射線療法を組み合わせた治療が多く行われています。乳癌の再発は、手術後2~3年もしくは5年前後くらいに起こることが多いですが、10年後や20年後に現れることもあり、長期にわたる経過観察が必要です。
 肺癌はⅠ期が多い一方で、大腸癌と同様に再発やStageⅣの患者さんも多くみられます。Ⅰ期の場合は胸腔鏡による手術が多く行われています。再発や進行癌では、化学療法のために入退院を繰り返すことが多くみられます。
 肝癌は再発が多く、肝動脈化学塞栓術やラジオ波焼灼療法などの内科的治療が、繰り返し行われています。
成人市中肺炎の重症度別患者数等ファイルをダウンロード
患者数 平均
在院日数
平均年齢
軽症 15 7.20 57.27
中等症 42 14.48 75.50
重症 15 15.33 81.00
超重症 - - -
不明 - - -
 成人市中肺炎の重症度別で患者数が最も多いのは、中等症の患者さんとなっております。
重症度が高くなると、平均年齢が高くなっています。
脳梗塞の患者数等ファイルをダウンロード
発症日から 患者数 平均在院日数 平均年齢 転院率
3日以内 162 17.20 76.92 48.59%
その他 15 14.67 70.80 3.39%
 大多数の患者さんは、突然の神経症状すなわち脳卒中を発症し、発症3日以内の急性期に救急入院しています。約半月の急性期入院ののち、半分の患者さんがリハビリのために転院しています。それ以後の入院は、慢性虚血に対して脳外科的治療を要するために他院から紹介になった患者さんです。
平均年齢は76歳であり、高齢になると動脈硬化や不整脈の患者さんが増加し、脳梗塞となるリスクが高くなります。早期発見により、超急性期治療を行うことで自宅退院可能となる患者さんの数も増えています。引き続き脳梗塞に対する啓蒙が必要です。
診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)ファイルをダウンロード
消化器内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K6532 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術(早期悪性腫瘍胃粘膜) 157 1.38 6.08 0.64% 74.35
K7211 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2cm未満) 138 1.23 1.75 0.00% 72.86
K7212 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2cm以上) 88 1.40 4.33 0.00% 69.60
K688 内視鏡的胆道ステント留置術 88 1.40 5.85 10.23% 71.19
K6535 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術(その他) 80 1.10 3.30 0.00% 69.34
 消化器内科では、胃あるいは大腸腫瘍に対する内視鏡的ポリープ・粘膜切除術あるいは粘膜下層剥離術を多く行なっております。外来での日帰り手術も多いですが、血をさらさらにする薬を飲んでおられる患者さんも多くなり、切除時の出血のリスクが高い患者さんは入院で加療しています。県内の広い範囲から受診されるため、当日入院当日治療が出来にくく、前日入院で対応しています。全体として難しい治療が多いのは事実ですが、術後の入院日数の短縮に取り組んでいます。胆管の結石や感染症は重症化する場合も多く、広いエリアから緊急内視鏡処置を受け入れているため、治療手技としての内視鏡的乳頭切開術・乳頭括約筋切開や内視鏡的胆道ステント留置術が多くなっています。
肝臓内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K6152 血管塞栓術(頭部、胸腔、腹腔内血管等)(選択的動脈化学塞栓術) 94 1.07 8.24 1.06% 74.09
K635 胸水・腹水濾過濃縮再静注法 49 1.49 3.82 2.04% 71.86
K697-32ロ 肝悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法(2cmを超える)(その他) 14 2.93 6.43 0.00% 75.64
K697-31ロ 肝悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法(2cm以内)(その他) 14 0.86 4.50 0.00% 72.43
K533-2 内視鏡的食道・胃静脈瘤結紮術 - - - - -
 肝臓内科の入院患者さんで一番多い疾患は肝細胞癌です。肝細胞癌の治療は肝予備能(アルブミン値、黄疸値、凝固蛋白値、腹水の程度、脳症の程度から判定します)と肝細胞癌の状態(ステージ、癌の個数と大きさ)から治療方針を決めます。外科切除の適応がない場合には内科的治療として肝動脈化学塞栓術(TACE)、経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)などの局所治療を行いますが、このような局所療法で根治が期待できない場合には分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤などの薬物治療を行っています。造影剤CTやMRIで濃染する多血性の肝細胞癌であれば、肝動脈化学塞栓術(TACE)を実施し、その後に経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)を行うことが多いです。RFAの適応は肝癌治療ガイドライン(癌の大きさと個数が3㎝3個以内)を原則としていますが、3㎝を超える大きめの肝癌に対して焼灼を行う場合は1回の穿刺で完全に焼灼することは困難であり、RFAより大きな焼灼範囲が得られるマイクロ波を用いて焼灼しています。
肝硬変の合併症の一つである肝硬変に伴う腹水に対して腹水を穿刺排液するのみではなく、清潔なバッグに回収し濾過と濃縮を実施し、回収した腹水中のアルブミンを点滴静注する腹水濾過再靜注法(CART)も数日間の入院で行っています。食道・胃静脈瘤の破裂で受診された場合は消化器内科にて内視鏡的に緊急止血処置を行い、その後、当科で肝不全の治療を行い、肝予備能と全身状態が回復した患者さんには硬化療法などで再出血の危険が軽減するように治療しています。
腎臓内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K6121イ 末梢動静脈瘻造設術(内シャント造設術)(単純) 21 10.43 15.38 9.52% 65.95
K6147 血管移植術、バイパス移植術(その他の動脈) - - - - -
K608-3 内シャント血栓除去術 - - - - -
K607-3 上腕動脈表在化法 - - - - -
K635-3 連続携行式腹膜灌流用カテーテル腹腔内留置術 - - - - -
 腎臓内科では、他科と連携して手術・処置を行っています。血液透析を導入するためのシャント手術は心臓血管外科と連携しています。また、腹膜透析導入には消化器外科と連携し、腹膜透析カテーテルを挿入しています。シャント狭窄や閉塞に対しては循環器内科や心臓血管外科で血管拡張術や血栓除去術を施行していただいています。その他腎臓病患者さんの合併症(冠動脈疾患や悪性腫瘍など)の精査を行っています。
循環器内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K5951 経皮的カテーテル心筋焼灼術 心房中隔穿刺又は心外膜アプローチを伴うもの 等 421 1.59 2.40 0.00% 68.80
K5493 経皮的冠動脈ステント留置術 その他のもの 102 3.61 3.92 3.92% 72.61
K5952 経皮的カテーテル心筋焼灼術 その他のもの 等 91 2.11 2.62 1.10% 61.15
K5461 経皮的冠動脈形成術 急性心筋梗塞に対するもの 83 0.02 14.67 9.64% 72.12
K5972 ペースメーカー移植術 経静脈電極の場合 等 66 1.41 6.09 6.06% 78.68
 循環器内科では、頻拍性不整脈に対するカテーテル心筋焼灼術を行っており、特に心房細動に対するカテーテル治療が増加しています。心房中隔穿刺を行うもの(主に心房細動)とそれ以外でコードが分かれていますが合わせると500例を超えています。また徐脈性不整脈に対するペースメーカー移植術も症例が増えています。虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)に対する経皮的冠動脈ステント留置術や経皮的冠動脈形成術といった心臓カテーテル治療も積極的に実施しており、心筋梗塞に対する救急対応を行っています。心臓カテーテル治療とは、腕や足の血管から心臓まで管を通して動脈硬化で狭くなった心臓の血管(冠動脈)を治療する方法です。使用する器材によりコードが異なり、また複数回行うこともあります。また冠動脈動脈硬化の重症化により石灰化が進んだ症例が多く、石灰化を削り取るカテーテルを使った治療も中四国では最も症例が多い施設の一つになっています。急性心筋梗塞に対する緊急対応も24時間行っており、多くの症例の治療を行っています。下肢動脈の動脈硬化による虚血に対してもカテーテル治療を実施しています。
消化器外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K672-2 腹腔鏡下胆嚢摘出術 99 0.91 4.20 1.01% 64.54
K719-3 腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術 等 66 3.79 10.91 1.52% 71.30
K740-22 腹腔鏡下直腸切除・切断術(低位前方切除術・手術用支援機器使用) 等 44 3.30 18.84 2.27% 63.89
K6335 ヘルニア手術 鼠径ヘルニア 等 35 1.20 2.69 0.00% 75.86
K718-21 腹腔鏡下虫垂切除術 虫垂周囲膿瘍を伴わないもの 等 32 0.56 3.91 0.00% 41.03
 消化器・一般外科では、消化器悪性腫瘍(がん等)の手術を多数行っており、手術技術においても高い評価を受けています。Kコードによる分類では、部位や術式によって細分されるため、全体像はわかりにくくなっています。ちなみに2023年の手術症例数は、大腸悪性腫瘍173例(結腸92例/直腸81例 )、胃悪性腫瘍72例、食道悪性腫瘍12例、肝臓胆道腫瘍54例、膵臓腫瘍25例でした。大腸癌、胃癌、食道癌手術の大部分は鏡視下手術(腹腔鏡または胸腔鏡)で行っており、胃癌と直腸癌ではロボット手術も導入しています。良性疾患の手術は、胆石手術128例、ヘルニア手術74例、虫垂炎手術40例、大腸良性疾患手術34例などとなっています。香川県内で最多の消化器外科手術を行っている病院として、今後も更に手術と診療の質を向上していきたいと考えております。
呼吸器外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K514-23 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 肺葉切除又は1肺葉を超えるもの 60 1.52 6.93 0.00% 70.35
K514-22 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 区域切除 40 1.58 5.53 0.00% 69.30
K514-21 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 部分切除 32 1.50 4.56 0.00% 70.78
K5131 胸腔鏡下肺切除術 肺嚢胞手術(楔状部分切除によるもの) - - - - -
K513-2 胸腔鏡下良性縦隔腫瘍手術 等 - - - - -
 呼吸器外科領域において治療対象として最も多い疾患は肺癌です。新型コロナウイルス蔓延の影響が遷延し、診断の遅れが危惧されていますが、呼吸器外科においては依然として肺癌が入院患者数、手術数の大部分を占めています。当院は県の中核施設として積極的に最新の肺癌治療手技を取り入れています。2003年には先進的に完全胸腔鏡下手術を導入し、2016年にはロボット支援下肺癌手術を、さらに2021年にはロボット支援下縦隔腫瘍手術や単孔式胸腔鏡手術を始めています。また、肺癌に対しては集学的(複数診療科が協力して)治療がしばしば必要となりますが、当院では定位照射などの放射線治療に関しては放射線科医と、化学療法や分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬などの新規薬物治療については呼吸器内科医・腫瘍内科医と連携して診療に当たっています。
肺癌の手術においては、標準術式である肺葉切除術を最も多く行っていますが、早期肺癌に対しては区域切除や部分切除などの縮小手術を積極的に行っています。肺気腫などの慢性肺疾患により呼吸機能が低下している患者さんでは禁煙外来、呼吸リハビリテーション外来などを活用して呼吸機能の改善を図り、外科的手術の可能性を追求しています。
 若年者に発生する原発性自然気胸では胸腔鏡下嚢胞切除を基本として吸収性補強剤による被覆を行っています。続発性自然気胸に対しても、積極的に胸腔鏡下手術を行っています。時に治療に難渋しますが、手術に加えて気管支鏡下塞栓術や胸膜癒着術などの治療を組み合わせて治癒を目指しています。
乳腺・内分泌外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K4762 乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わないもの) 77 1.92 5.86 0.00% 59.74
K4763 乳腺悪性腫瘍手術 乳房切除術(腋窩部郭清を伴わないもの) 66 2.30 7.95 1.52% 61.98
K4765 乳腺悪性腫瘍手術 乳房切除術(腋窩鎖骨下部郭清を伴うもの)・胸筋切除を併施しないもの 24 2.42 9.92 0.00% 62.54
K4741 乳腺腫瘍摘出術 長径5センチメートル未満 等 12 1.08 2.17 0.00% 44.17
K4631 甲状腺悪性腫瘍手術 切除(頸部外側区域郭清を伴わないもの) 等 10 2.30 8.70 0.00% 59.50
 乳癌手術では、整容性の高い乳房温存手術を基本術式としています。腫瘍の大きい症例に対しては、術前化学療法を施行し、腫瘍を小さくしてから温存手術をおこなうこともあります。しかし残念ながら、病状により乳腺全摘術を選択せざるを得ない場合もあります。その場合は、術前より形成外科医と相談し、希望があれば乳房再建手術もおこなっています。再建方法としては、①人工乳房による再建②広背筋皮弁による再建③血管吻合をともなった腹部遊離皮弁による乳房再建 ④腹直筋皮弁による乳房再建をおこなえるようにしています。甲状腺手術では、進行甲状腺癌では拡大手術による根治術を目指し、早期の甲状腺癌や良性疾患に対しては低侵襲性手術を行っています。低侵襲性手術として、小切開法による甲状腺手術をおこなっています。
心臓血管外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K5612ロ ステントグラフト内挿術(腹部大動脈) 22 1.50 5.36 0.00% 79.91
K5522 冠動脈、大動脈バイパス移植術(2吻合以上) 15 6.00 18.47 13.33% 70.87
K5606 大動脈瘤切除術(腹部大動脈(分枝血管の再建)) 12 2.08 16.83 8.33% 73.75
K5943 不整脈手術(メイズ手術) 11 9.45 14.64 18.18% 72.27
K554-21 胸腔鏡下弁形成術(1弁) - - - - -
 心臓血管外科において、腹部大動脈瘤については、開腹人工血管置換術とステント-グラフト内挿術のどちらかを患者さんごとに評価して最適な方法を選択して行っています。特に腹部大動脈瘤ではステントグラフトが増加しており、また最近ではほとんどの症例は切開せず、両鼠径部の穿刺により治療を行っており、入院日数が短縮しています。胸部大動脈瘤に関しましても同様です。心房細動に対するメイズ手術は主に弁膜症に合併した症例に対して同時に行っています。メイズ手術の際には左心耳を閉鎖して将来的は血栓塞栓症を予防しますが、最近では胸腔鏡を使用した左心耳閉鎖を行っており、低侵襲で、特に抗凝固剤を内服していても脳梗塞を繰り返したり、出血合併症のため抗凝固剤の継続が困難な方には非常に有効な方法です。冠動脈疾患に対してはカテーテル治療が適さない症例は冠動脈バイパス術を行っており、長期経過が良好です。心臓を止めずにバイパス術を行うことにより、心機能低下を防止するようにしています。弁膜症は社会の高齢化に伴い増加している疾患で、特に心臓の出口にある大動脈弁が狭くなる大動脈弁狭窄症が増加しています。人工弁に置き換える弁置換術が基本的な治療法で、超高齢者の患者さんでも安定した成績で手術が行えています。心臓(左心室)の入り口にある僧帽弁は、きちんと閉じない閉鎖不全症が主で、自己弁を温存する弁形成術を中心に行っています。弁膜症に対しては可能な場合は患者さんに負担の少ない右小開胸(胸腔鏡下)で手術を行うようにしています。
脳神経外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K164-2 慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術 48 1.38 9.06 33.33% 81.19
K1692 頭蓋内腫瘍摘出術(その他) 40 3.18 19.60 27.50% 64.65
K1781 脳血管内手術(1箇所) 27 1.22 18.07 33.33% 62.41
K178-4 経皮的脳血栓回収術 26 0.04 20.23 76.92% 78.96
K160-2 頭蓋内微小血管減圧術 13 1.23 9.85 0.00% 62.08
 脳神経外科において1番目に多い手術は、慢性硬膜下血腫に対する穿孔洗浄術です。高齢者に多く、軽微な頭部外傷を負った1~2ヶ月後に、頭痛や歩行障害、認知機能の低下などの症状で発症します。比較的急速に悪化するため、救急入院して緊急手術となることがほとんどです。手術は局所麻酔で短時間で終えることができ、術後はたちまち症状が改善し、もとの状態に戻って、約7割の方が自宅へ退院されます。
2番目に多い手術は、脳腫瘍の摘出術です。良性のものと悪性のものがあります。良性の場合は術後抜糸がすめば1週間ほどで退院できます。悪性の場合は引き続き放射線治療や化学療法の追加が必要で、約1.5カ月の入院が必要です。
3番目に多い手術は、脳動脈瘤に対する血管内手術です。動脈瘤に対する治療法としては、開頭によるクリッピング術と、血管内手術によるコイル塞栓術の二つがあります。血管内手術では、動脈を介してカテーテルを送り込み、金属製のコイルを動脈瘤内に詰めて閉塞させます。開頭手術に比べて侵襲の少ない方法であり、年々増加傾向にあります。動脈瘤が破裂してくも膜下出血を発症して入院される場合は入院期間が約1か月になりますが、まだ破裂していない動脈瘤に対する予防的な手術の場合は、短期間で後遺症なく自宅へ退院されます。
4番目に多い手術は、経皮的脳血栓回収術です。これは脳梗塞に対する血管内治療です。脳動脈の閉塞により突然の神経症状の発症、すなわち脳卒中で救急入院されます。緊急で血管内治療により血栓を除去して血流が再開できると、脳梗塞に陥ってしまう神経細胞を最小限にできますが、治療結果の程度は様々で、   短期入院で自宅退院される方から長期にわたるリハビリが必要になる方までおられます。
5番目に多い手術は、顔面痙攣や三叉神経痛などに対する微小血管減圧術です。神経が血管を圧迫し顔の痙攣や痛みをおこす疾患で,内科的治療などで抵抗性のある方を対象に手術が行われます。小さな開頭で顕微鏡などを利用して圧迫の解除を行います。症状は速やかに無くなることが多く,通常は術後1週間で退院することが可能です。
整形外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K0461 骨折観血的手術(大腿) 等 86 2.15 12.09 59.30% 71.33
K0821 人工関節置換術(膝) 等 64 1.30 17.97 20.31% 74.06
K0462 骨折観血的手術(下腿) 等 54 2.17 11.37 42.59% 57.93
K1426 脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(椎弓形成) 等 53 1.74 14.43 43.40% 70.08
K1425 脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(椎弓切除) 51 1.49 14.00 19.61% 71.51
 令和5年度の手術件数は1521件でした。昨年度とほぼ同数です。その中でも昨年度に引き続き股関節の骨折に対する骨接合術が最多でした。第2位は股関節や膝関節の変形性関節症に行う人工関節でした。第3位は下腿の骨折に対する手術。第4位第5位は脊椎の手術でした。
形成外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K628 リンパ管吻合術 11 0.91 6.91 0.00% 60.91
K0301 四肢・躯幹軟部腫瘍摘出術(躯幹) 等 - - - - -
K0102 瘢痕拘縮形成手術(その他) - - - - -
K0134 分層植皮術(200cm2以上) - - - - -
K013-22 全層植皮術(25cm2以上100cm2未満) - - - - -
 形成外科では、顔や手足をはじめ全身の表面にできた傷や変形をきれいに治すことを主な目的としています。けが、顔の骨折、やけど、できもの、あざ、先天異常、治りにくい傷(難治性皮膚潰瘍)、がんの切除・再建および乳房再建などの治療をおこなう外科系の専門領域です。形成外科の手術で圧倒的に一番多いのはほくろやおできなど皮膚のできもの(皮膚腫瘍)の摘出術ですが、ほとんどは外来での手術です。入院手術で多いのはリンパ管吻合術、四肢・躯幹軟部腫瘍摘出術、瘢痕拘縮形成手術、分層植皮術、全層植皮術です。
 リンパ管静脈吻合術とはマイクロサージャリー(顕微鏡下の微小手術)の技術を用いた、リンパ浮腫に対する外科的治療です。
形成外科で行う四肢・躯幹軟部腫瘍摘出術の一番多い原因は脂肪腫です。脂肪腫は、脂肪細胞が腫瘍化したものですが、筋肉内の深いところに出来ていたり、まれに悪性のものもあるため、きちんとした検査を行った上で必要に応じて摘出術を行います。瘢痕拘縮とは傷あとが引きつれて思うように関節などが動かせなくなる状態で、保存的治療で改善しない場合は、Z形成術、W形成術をはじめとする局所皮弁術等の瘢痕拘縮形成術を行います。分層植皮術や全層植皮術を併用することもあります。外傷や熱傷で皮膚欠損が大きく、縫合による閉鎖が不可能な場合に植皮術を用います。自分の皮膚を用いる植皮術には使う皮膚の厚さで、分層植皮術から全層植皮術までいろいろな方法があります。
泌尿器科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K783-2 経尿道的尿管ステント留置術 184 0.13 2.28 3.80% 70.53
K8036イ 膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術 電解質溶液利用のもの 等 74 1.43 3.32 0.00% 73.05
K843-4 腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術(内視鏡手術用支援機器を用いるもの) 等 43 1.14 10.21 0.00% 70.19
K7811 経尿道的尿路結石除去術 レーザーによるもの 等 40 1.35 4.15 5.00% 66.38
K830 精巣摘出術 18 1.00 2.22 0.00% 77.83
 泌尿器科疾患における治療は、尿路性器癌(腎癌、腎盂尿管癌、膀胱癌、前立腺癌)に対するものが最も多くなっています。その内訳として、腎癌に対しては、腎温存のできない大きな癌に対しては、鏡視下腎摘除術を行っています。転移を有する進行癌に対しては、薬物療法や免疫療法を主体に治療を行っています。腎盂尿管癌に対しては、早期の場合、鏡視下での手術療法を行い、転移を有する進行癌に対しては全身抗癌剤治療、免疫療法を主体に治療を行っています。             膀胱癌に対しては、早期の場合、内視鏡手術を中心に治療を行い、転移のない進行癌に対しては鏡視下膀胱全摘を、転移を有する進行癌に対しては全身抗癌剤治療、免疫療法を主体に治療を行っています。前立腺癌に対しては、早期の鏡視下手術を行い、転移・進行癌に対しては内分泌、放射線、全身抗癌剤治療などを行っています。当院での鏡視下手術はロボット支援手術が主流となっています。悪性腫瘍以外の疾患では、腎尿管結石に対しては、結石の大きさや状態に応じて、体外衝撃波結石破砕術や細径内視鏡下のレーザーを用いた砕石術を行っています。また、婦人科悪性疾患や消化器悪性疾患などに伴う尿管狭窄に対して尿管ステント留置による尿路確保を積極的に行っています。
産科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K8982 帝王切開術 選択帝王切開 25 1.52 6.68 0.00% 33.64
K8981 帝王切開術 緊急帝王切開 22 3.41 6.82 0.00% 31.45
K911 胞状奇胎除去術 - - - - -
K9122 異所性妊娠手術 腹腔鏡によるもの 等 - - - - -
K9091イ 流産手術 妊娠11週までの場合 手動真空吸引法によるもの - - - - -
 妊娠・出産はほとんどの場合が順調に経過しますが、母体や胎児、あるいは両方に突然問題が起こることがあります。妊娠初期にはさまざまな理由で10~15%が流産になるとされています。お腹の痛みと生理よりも多い出血があって、多くは自然流産となりますが、子宮内にとどまることがあります(稽留流産)。その場合は流産手術が必要になることがあります。以前は妊娠組織を掻き出す掻爬術が主流でしたが、最近は子宮をより傷つけることのないよう吸引法が主流となっています。子宮内ではなく卵管や卵巣などに妊娠することがあり(異所性妊娠)、お腹の中で大量に出血し、かなり強い下腹部痛が起こり、ショック状態となることがあります。自然に体に吸収され手術をしなくてすむこともありますが、できる限り腹腔鏡下に妊娠部位を取り除く手術を行います。切開創が小さく、早期退院が可能です。             胞状奇胎という特殊な妊娠は子宮内から除去を行って、しばらく厳重な経過観察が必要となります。骨盤位や既往帝王切開後、胎盤の位置異常、多胎妊娠などは、予定の帝王切開を行っています。妊娠経過が順調で、経腟分娩をトライしていても、分娩が進行しなかったり、母体合併症の悪化や妊娠に伴う合併症(妊娠高血圧症候群など)の悪化、胎児にストレスが認められた場合(胎児機能不全)は緊急で帝王切開となる場合があります。全分娩における帝王切開率は約25~30%となっています。お母さんにとって安心してお産ができ、元気な赤ちゃんを迎えていただけるよう、お手伝いしていきます。
婦人科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K877-2 腹腔鏡下膣式子宮全摘術 等 78 1.00 4.91 0.00% 47.37
K877 子宮全摘術 50 1.18 6.88 0.00% 49.66
K8882 子宮附属器腫瘍摘出術(両側) 腹腔鏡によるもの 等 47 0.96 3.77 0.00% 45.62
K867 子宮頸部(腟部)切除術 39 1.00 1.00 0.00% 38.15
K872-31 子宮鏡下有茎粘膜下筋腫切出術、子宮内膜ポリープ切除術 電解質溶液利用のもの 35 1.00 1.03 0.00% 43.23
 婦人科手術の中で、(①と②)子宮全摘術は、当科では一番症例数の多い手術です。子宮筋腫や子宮腺筋症などの子宮良性腫瘍にたいする根治的治療法です。子宮の大きさや分娩歴、過去の手術既往など、諸条件を考慮した上で、①の腹腔鏡下子宮全摘術を行うか②の開腹による子宮全摘術を行うかを選択します。開腹手術に比べ腹腔鏡下手術の方が、傷が小さく術後疼痛も軽い、などメリットがあります。③子宮附属器腫瘍摘出術は、良性の卵巣(卵管)腫瘍(嚢腫)を対象とする手術法です。卵巣卵管を全摘する方法と、腫瘍部分のみを取り除く方法があります。子宮全摘術と同様に、アプローチの方法によって開腹手術と   腹腔鏡下手術の方法がありますが、多くの方で腹腔鏡下手術が可能となっています。④子宮頸部(腟部)切断術は、子宮頸部(腟部)円錐切除術といわれます。子宮頸がんの前癌病変である子宮頸部上皮内腫瘍・異型度3(いわゆる高度異形成)や、ごく初期の子宮頸がんに対する、診断・治療を目的とする手術です。子宮頸がん検診を定期的に受けていただければ、前癌病変の段階で早期発見できるでしょう。この手術によって子宮を温存できれば、将来の妊娠の可能性を残すことが出来ます。⑤子宮鏡下手術は、子宮内腔に隆起するように発生する子宮内膜ポリープや粘膜下子宮筋腫などを、子宮鏡という内視鏡下に切除する手術法です。発生部位が子宮内腔に限られる場合が適応です。子宮は温存可能です。
眼科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K2821ロ 水晶体再建術 眼内レンズを挿入する場合 その他のもの 56 0.00 1.00 0.00% 74.68
 眼科における入院での手術の大部分は、白内障手術です。当院では、日帰り手術も施行していますので、実際の症例数や種類は上記よりも多いです。
耳鼻咽喉科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K3772 口蓋扁桃手術 摘出 等 44 1.57 6.82 0.00% 29.09
K340-5 内視鏡下鼻・副鼻腔手術III型(選択的(複数洞)副鼻腔手術) 等 26 2.12 4.08 0.00% 54.73
K340-6 内視鏡下鼻・副鼻腔手術IV型(汎副鼻腔手術) 19 1.84 3.84 0.00% 55.53
K309 鼓膜(排液、換気)チューブ挿入術 17 1.00 1.00 0.00% 3.59
K3932 喉頭腫瘍摘出術 直達鏡によるもの 12 2.08 1.00 0.00% 64.33
 耳鼻咽喉科で1番目に多い口蓋扁桃手術・摘出は慢性扁桃炎、IgA腎症、睡眠時無呼吸症候群の患者さんに対して、症状改善目的で施行します。2・3番目の内視鏡下鼻・副鼻腔手術は慢性副鼻腔炎の患者さんで、投薬でのコントロールが困難な方に対して、症状改善目的で手術をします。4番目の鼓膜(排液、換気)チューブ挿入術は、滲出性中耳炎の小児の患者さんに対して、聴力改善目的で施行します。5番目に多い喉頭腫瘍摘出術は、喉頭に出来た腫瘍を摘出し、診断確定と治療を行います。
その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)ファイルをダウンロード
DPC 傷病名 入院契機 症例数 発生率
130100 播種性血管内凝固症候群 同一 - -
異なる 20 0.18%
180010 敗血症 同一 38 0.34%
異なる 29 0.26%
180035 その他の真菌感染症 同一 - -
異なる - -
180040 手術・処置等の合併症 同一 88 0.79%
異なる 10 0.09%
この指標は、入院中の感染症や合併症の発症率を示しており、「入院契機と同一」とは、入院時すでにその疾患と診断されている患者さんであり、「入院契機と異なる」とは、別の疾患で入院となった患者さんが入院経過中にこれらの疾患となり、その疾患が入院時の疾患より当院での治療が主となった場合を意味しております。
 当院での症例数が10症例未満の項目については、表示が「-」となっております。
 「播種性血管内凝固症候群」や「敗血症」は、致死率が高い重症合併症であり、どの症例においても様々な要因からこれらの疾患を発症するため、大手術等の高度な医療を提供している当院のような医療機関では、一定程度発生しますし、敗血症においては、入院時より診断されている患者さんの受入れ、治療していることを示しています。
そして、手術・処置等の合併症については、腎疾患や心・脳疾患による体内挿入物であるカテーテルの合併症が約半数となっております。これらの合併症は、挿入後の経年劣化等により一定数発生してしまう症例ではあります。
 当院では手術や処置前には患者さんへ十分な説明を行い、多職種で構成されたチームで合併症の発生を抑えられるような活動を行っております。
リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率ファイルをダウンロード
肺血栓塞栓症発症のリスクレベルが
「中」以上の手術を施行した
退院患者数(分母)
分母のうち、肺血栓塞栓症の
予防対策が実施された患者数(分子)
リスクレベルが「中」以上の手術を
施行した患者の肺血栓塞栓症の
予防対策の実施率
1,874 1,802 96.16%
 肺血栓塞栓症とは、肺の血管に血のかたまり(血栓)が詰まり、突然呼吸困難や胸痛、ときには心停止をきたす危険な病気で、重症例の予後は不良となります。肺血栓塞栓症は、太ももやふくらはぎの筋肉の層にある静脈(下肢深部静脈)に血栓ができ、その血栓が何らかの拍子に肺に到達して発症します。
 肺血栓塞栓症の危険因子の主なものとして挙げられるのは、「寝たきりの状態」、「手術時あるいは手術後」であり、当院では周術期や危険因子があると思われる患者さんに対し、「肺血栓塞栓症 深部静脈血栓症の予防に関する計画書」を作成し、リスクレベルを早期に判断し、早期離床および積極的な運動、弾性ストッキング、間欠的空気圧迫法、抗凝固療法等を単独、あるいは併用し予防しています。予防対策実施率が95%を超えており、特に周術期の患者さんに対しての予防策を積極的に実施しております。
血液培養2セット実施率ファイルをダウンロード
血液培養オーダー日数(分母) 血液培養オーダーが1日に
2件以上ある日数(分子)
血液培養2セット実施率
2,909 2,162 74.32%
 血液培養検査は、感染症を診断する上で非常に重要な検査であり、より迅速で正確な検査結果が求められます。血液培養が陽性になることで、血流感染の存在を確認することができ、適切な抗菌薬治療を行うことができます。
 血液培養検査は1セットのみの場合と比較し、2セット実施することで約20%の検出率向上が期待でき、検出率が向上することで正確な診断ができ、疑陽性による過剰治療を防ぐことにもつながります。血液培養で菌を検出するためには、採血のタイミングが重要で、悪寒戦慄が出現し始めた時や、発熱の初期が血液中の菌が最も多いとされており、その時期が最適です。2セット以上実施することは感染対策上推奨され、2014年度診療報酬改定より、血液を2か所以上から採取した場合に限り、2回算定できるようにもなっております。
 上記血液培養2セット実施率は、当院の全診療科の数値であり、新生児や小児患者においては2セットすることが困難なことが多いため、小児科患者を除くと、当院の実施率は約98%となっています。
 当院では、感染制御チームや抗菌薬適正使用支援チームが中心となり、当院における血液培養検査時の手順マニュアル等を作成したり、院内での周知活動を行っています。
広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率ファイルをダウンロード
広域スペクトルの抗菌薬が
処方された退院患者数(分母)
分母のうち、入院日以降抗菌薬処方日
までの間に細菌培養同定検査が
実施された患者数(分子)
広域スペクトル抗菌薬使用時の
細菌培養実施率
924 819 88.64%
 広域スペクトル抗菌薬とは、多くの細菌に対して抗菌効果のある抗菌薬のことですが、その反面薬剤耐性菌も広範囲に選択してしまうリスクがあり、使用には注意が必要となります。
 近年、多剤耐性アシネトバクター属菌や、幅広い菌種に効果を有するカルバペネム系抗菌薬に耐性のある腸内細菌科細菌など、新たな抗菌薬耐性菌が出現し、難治症例が増加していることが世界的な問題となっています。
 不適切な抗菌薬の使用は、耐性菌の発生や蔓延の原因になることから、当院では感染症科医師、感染管理認定看護師、薬剤師、臨床検査技師などにより構成された抗菌薬適正使用支援チームを組織し、チームで感染症科診療、血液培養陽性患者、薬剤耐性菌検出患者等の主治医に対して、抗菌剤の適正使用(狭域なものを短期間使用)するよう指導や助言を行っており、年2回以上最新の情報を職員に研修等を実施し、教育・啓発活動を行っております。抗菌薬適正使用の鍵を握るのは正確な微生物学的診断であり、抗菌薬投与前の適切な検体採取と細菌培養検査が重要な要素となります。
更新履歴
2024/09/27
病院指標を公開しました。
2024/10/21
病院指標の「平均在院日数(全国)」を更新しました。