はじめまして、香川県立中央病院 研修医2年 木村 優太です
当院は香川大学附属病院とともに、香川県のドクターヘリの基地病院です。日本一小さい都道府県ということもあってか、香川県は47都道府県の中で、最後にドクターヘリが導入されました(令和3年度より)。全国的にも珍しいですが、当院では研修医2年目になるとドクターヘリに搭乗することができます。今回12月の救急科をローテート中にドクターヘリに搭乗し、とても貴重な経験をさせていただきましたので、簡単にご紹介させていただきます。
ドクターヘリに搭乗する1日は多忙です。まずはフライトスーツに着替え、7:30にERに集合し、ヘリで使用する医療物品やや無線など機材の動作チェックを行います。その後、8:10よりでブリーフィング(ミーティングのようなもの)にてPHSの動作確認、天候や日没時間の確認を行います。以降は、通常の救急業務を手伝いながら、出動要請を待つ形となります。
出動要請のピッチが鳴ると、今行なっている仕事は中断し、簡単な情報を得てブリーフィングし、速やかに屋上のヘリポートに集合、ヘリに乗り込み、そのまま離陸します。搭乗する際は、上級医(フライトドクター)、看護師(フライトナース)、パイロット、整備士の方と一緒に、僕たち研修医はOJT(On the Job Training: 訓練者の意味)として搭乗します。その後、ランデブーポイントと呼ばれるヘリが離着陸可能なポイントに着陸します。転院搬送であれば、申し送りを聞き、ヘリに収容します。覚知・現場要請の場合は、救急車内の患者さんを診察し、簡単な治療を行い、適切な病院へ搬送します。搬送先の病変へ申し送りを行ったのち、再度ヘリにて基地病院である当院へ帰還します。
実際に搭乗し始めて感じたのは、事前情報の少なさです。覚知要請となる場合、「意識障害」「呼吸苦」「2輪vs 4輪の交通外傷」など一言・二言の情報しかなく、バイタルサインも分からず出動します。ヘリで移動中に追加で情報が入ってくることもありますが、普段病院で救急車を待っている時に比べればどうしても少なくなります。また、できる検査も限られます。レントゲンは取れませんし、ルート確保時に採血は可能ですが、検査結果を見ることはできません。問診と身体所見、ポータブルエコーから大まかな病態を予測しなければなりません。このように普段の診療現場より限られた情報・検査から、より重篤な患者さんを救命しなければならず、緊張感の溢れている現場ですが、同時に救命できた時の喜びややりがいも大きいです。また、他の病院へ搬送後、基地病院に戻る時は緊張感なく、上空より風光明媚な景色を堪能できます。例えば、上空からの栗林公園を何度か見ましたが、普段見られない視点からの景色は優美なものでした。
僕が6日間でドクターヘリに搭乗した件数は10件でした。当初は勝手がわからず、あたふたとすることもありましたが、何回か搭乗するうちに徐々に慣れて、フライトドクターと共に診療を行えるようになりました。また、ヘリ搭乗前にJPTECのミニコースを受けたり、POCUS(point-of-care ultrasound)の勉強をしたりしていたのですが、実際の現場でそれらを生かすことができた時は達成感を感じました。救急隊の皆さんは普段からこのような現場で情報を収集し、病院の診療まで繋いでくださっていることに改めて感服しました。 さて、研修医のうちからドクターヘリに搭乗し、現場で活動できる病院はなかなかないと思います。医学部5,6年生の皆さんはぜひ当院での研修を選択し、ドクターヘリに搭乗しましょう。
僕たちは待ってます !