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救命救急センター 佐々木 和浩
香川県立中央病院ドクターヘリのページをご覧いただきありがとうございます。すでにご存じかとは思いますが、令和4年4月18日より香川県ドクターヘリの運航が開始となりました。これは全国47都道府県で最後の導入ということになります。県立中央病院と香川大学医学部附属病院の2施設が基地病院となって、1週間交代(原則は月曜日から日曜日まで)で担当しています。
香川県は全国で一番面積が小さい県ですが離島も多く、また県境からは救命センターが遠いため、こういった場所で重症者が発生した場合は病院到着まで時間がかかっていました。ドクターヘリは要請から5分以内で離陸します。香川県全域どこでも基地病院から10‐15分以内で到着しますので、ヘリ要請から遅くとも20分以内には医師と看護師が患者さんと接触し、現場での治療を開始できます。より早く患者さんに治療を施すことによって、救命率の向上と後遺障害の軽減を目指しています。ドクターヘリは休日も含め365日稼働していますが、原則日中での運用となります。また、天候の悪い日や霧がかかって視界が悪い場合には、運航自体を休止する場合もあります。
令和4年度の1年間での要請件数は361件で、ほぼ1日1件のペースで要請をいただきました。今後もさらにドクターヘリを要請・活用していただけるよう、スタッフ一同さらなる研鑽を積んでいきたいと思っておりますので、みなさまのご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。
さて、このページではドクターヘリの様々な活動の様子や、運航実績、症例検討会やカンファレンスの告知・報告などをアップしていきます。香川県民の医療インフラとしてのドクターヘリを、より身近なものに感じていただける一助となれば幸いです。
ドクターヘリの導入
2022年4月中旬より香川県にもドクターヘリ(ドクヘリ)が導入されました。当県でのドクヘリ導入は全都道府県で最後であり、隣の岡山県が日本で最初に導入した2001年から遅れること21年が経過してしまいました。これは香川県が最もコンパクトな県であり、比較的東西の交通の便も良いことから、救急要請から病院搬送までの時間が全国で最も短時間であったことが理由でした。しかし高齢化に伴い病態が複雑になり、より総合的かつ専門性が求められる搬送事例が増え、病院選定に時間がかかってしまい徐々に搬送時間が長くなってきてしまいました。また、香川県は小豆島を代表するように島しょ部が非常に多く、これまでは防災ヘリコプターを使用して転院搬送を行なっていました。しかし島しょ部も高齢化が進み、島の病院だけでは対応できない事例が増え、年々ヘリコプターでの転院搬送例も増加していました。そこで県が中心となって2020年より導入の話が進み、様々な協議を重ね2022年に本格的に始動する事となったのです。
ドクターヘリの運用
香川県ドクヘリの基地病院は香川県立中央病院と香川大学附属病院が担っており、1週間ごとの交代制となっています。当院はフライトドクター(FD) 8名とフライトナース(FN) 7名で現在運用しています。今後はon the job trainingを経てFD, FNを増やしていく予定です。ドクヘリは有視界飛行となっていますので、基本的には夜間や天候不
良、視界不良の際には飛行することができません。そのため運用時間は8時30分~17時頃になっています(季節により変動します)。なお現在の機体は川崎式BK117型を使用しておりますが、今年度には新しい機体が導入される予定です。
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香川ドクターヘリ新機体導入しました
香川ドクターヘリが2023年11月下旬から新機体による運用を開始しております。これまでは以前高知ドクヘリで使用されていた川崎型BK117 C-1型を使用しておりましたが、現在はBK117 D-3型を使用しております。これまでの機体と比較して機内は広くなり、離着陸の振動も軽減されています。我々フライトスタッフも機内での活動もしやすくなり、患者さんの搬送負担の軽減にも繋がっている印象があります。香川ドクターヘリの運用を始めてから2年経過していますが、おおよそ1件/日のペースでフライトしており、2024年7月の時点で約800件の事案に対応してきました。徐々にフライト数も増えたことで、消防隊との連携も次第に慣れ、スムースな救命活動に繋がっていると思います。これからも香川県民の安心のため、フライトスタッフ一同精進して参ります
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香川ドクターヘリ 実働1000件到達しました!!
2022年5月から香川ドクターヘリが導入されて以来、予想を上回るペースで要請件数が増加し、2025年1月の時点で実働1000件に達しました。これは、多くの皆さまのご支援、ご協力があってこその成果であり、心より感謝申し上げます。
多くの事例は、小豆島をはじめとする搬送に時間を要する島嶼部にドクターヘリが有効活用されています。また交通外傷や脳卒中・心筋梗塞といった緊急を要する患者さんに対して迅速に対応することで、社会復帰につながるよう努めてまいりました。さらに、月1回の院内カンファレンスや年4回の救急隊との合同カンファレンスを通じて症例の事後検証を行い、ドクターヘリの運用改善に取り組んでいます。
ドクターヘリは、一分一秒を争う救命の現場において、迅速な医療提供を可能にする重要な役割を果たしています。1000件という節目は、私たちにとって大きな区切りであり、同時にこれからもさらなる努力を続けていく決意を新たにする機会でもあります。
今後も、地域の皆さまの安心と安全のために、迅速かつ的確な医療支援を提供できるよう、スタッフ一同精進してまいります。引き続きご支援のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
最後に、これまでにドクターヘリに関わってくださったすべての皆さまに、改めて感謝を申し上げるとともに、救命活動においてより一層の貢献ができるよう努めてまいります。
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ドクターヘリの要請
ドクヘリの要請は救急隊の判断によって行われます。現場へ駆けつけた救急隊が、患者さんの状態をみて、重症度や緊急性からドクヘリの適応だと判断したらこの時点で要請が行われます(現場要請と言います)。基地病院は司令室からドクヘリ要請があるとすぐにヘリを離陸させます。要請の際に決めておいた救急隊との待ち合わせ場所(ランデブーポイント)にドクヘリは着陸し、救急隊とドッキングした後、FDは救急車内で患者さんと接触し診察・治療を行います。また、司令室に119番があった時に、通報内容から明らかに患者さんが重症だと判断した場合(目の前で倒れて意識がありません、など)には、その時点でドクヘリを要請することもあります(覚知要請と言います)。この場合はFDがいち早くランデブーポイントに到着することができるので、現場要請よりも患者さんに接触するまでの時間を短くすることができます。なお、事故現場などで患者さんが救出できない場合には、FD/FNが救急車に同乗して現場まで向かうこともあります(現場送り込み)。実際は多くはないですが、ドラマ『コードブルー』ではほとんどの症例が現場送り込みだったので、イメージはつきやすいと思います。
ドクターヘリのメリット
1 .搬送時間の短縮
ドクヘリは、その機動力を生かして、島しょ部や医療機関の少ない山間部などから高度医療を受けることが可能な病院へ短時間で搬送することが可能です。ドクヘリは最高時速260Km/hrが出る上に障害物がないため、現場近くのランデブーポイントまで一直線で向かうことができます。地理的にコンパクトな香川県であれば基地病院から県内全域に10ー15分程度で到達することができます。なお救急車での患者さん搬送時間の1/3 – 1/5と言われています。時には越県をして患者さんを搬送することもあり、岡山市であれば10分程度で到着することが可能です。
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2 .早期治療介入
ドクヘリは上記のように搬送時間の短縮が注目されがちですが、本来の目的は患者さんの元へFD/FNを送り届け、早期から診断・治療を開始することです。この早期治療介入までの時間は、救急車で病院に搬送されてから診療が開始されるのに比べて、約30分短縮できると言われています。この時間短縮によって、患者さんの命を救い、後遺症を軽減することができます。また、診察を行なった医師の判断により患者さんの病状に応じて適切な医療機関を選定し搬送することが可能になります。例えば緊急で手術が必要なのにも関わらず、搬送された病院に専門のドクターがいないと、再度治療のできる医療機関に転院する必要があります。このタイムロスは患者さんの予後に大きく関わってきます。特に高エネルギー外傷や脳卒中、心疾患に関しては1秒でも早い治療介入が必要となるため下記のようにドクヘリの対象となる疾患に含まれます。 これらによりどこに住んでいても高度な医療を受けることができる、つまり“医療の地域格差を無くす”ことが可能となります 。
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ドクターヘリの対象となる疾患
1. 外傷
a. 高エネルギー外傷
b. 多発外傷
c. 重症熱傷など
2. 疾病
a. 意識障害、麻痺、強い頭痛(脳卒中)
b. 強い胸痛、腹痛(心筋梗塞、大動脈疾患など)
c. 呼吸困難(気管支喘息、急性心不全など)
d. バイタルサイン(脈拍、血圧、呼吸)に明らかな異常を認める
e. 体温異常、中毒など
3. 心肺停止
ドクターヘリのそれぞれ
ドクターヘリ フライトドクター紹介
ささき かずひろ
佐々木 和浩
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しらい くにひろ
白井 邦博
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おとむね かなこ
乙宗 佳奈子
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いわもと こうへい
岩本 康平
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あおえ もとい
青江 基
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しかたに よしのぶ
鹿谷 芳伸
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いちはら しゅうじ
市原 周治
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たかはし ゆう
高橋 悠
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