周産期
産科医療は母体の高年齢化や少子化といった社会情勢の中で、母体と赤ちゃんの命を預かり、正常に経過していたのに急に異常へと変化する。そんな状態に対応しなければなりません。
当院では母体と赤ちゃんの安全を第一に考え、また安全性を損なわない範囲で、できる限り妊婦さんのご希望にそった快適な分娩を大切にしたいと考えています。正常妊娠・分娩だけではなく、様々な合併症(糖尿病、高血圧、自己免疫性疾患、てんかんなど)を持った妊婦の方々や、妊娠に伴う合併症(切迫流・早産、妊娠高血圧症候群、妊娠性糖尿病、胎盤位置異常、子宮内胎児発育不全、産後大出血など)の対応を行っています。
また、当院が三次救急指定病院であるため、産科以外の救急疾患を起こした妊婦さんにも対応しています。そのために小児科や内科、外科、脳神経外科、麻酔科、放射線科など、それぞれに必要な他科と連携をとりあって対応しています。
特に小児科は当院で管理する妊婦さんが安心して出産・育児ができるよう、ハイリスク分娩の立会いや全新生児の診察を行っており、必要な場合は入院・加療を行い、24時間いつでも対応してサポートしています。
さらに高いスキルを持ったアドバンス助産師を中心に、経過の順調な経産婦の方を対象に、畳のあるLD(分娩室)にて、ご家族に立ち会って頂きながらアットホームな雰囲気の中、フリースタイル分娩も行っています(院内助産)。特に問題がなければ医師は立ち会いませんが、何かあれば直ちに医師が対応します。
妊娠週数や赤ちゃんの体重、状態によってはさらなる高次施設である他病院母子周産期センターへの母体搬送、新生児搬送の可能性がありますが、適切なタイミングでの搬送を常に心がけています。
「すべての妊婦さんが順調な妊娠・分娩経過を経て欲しい。赤ちゃんが元気で生まれてきて欲しい。楽しく育児をして欲しい」
これこそが我々産科スタッフ一同の願いです。言い換えれば、誰もが順調に経過しない可能性があります。妊娠に伴ういろいろな合併症を起こさないため、妊婦健診や助産師による個別指導、マタニティクラスなどを通じて、楽しい妊婦生活を送れるよう、できる限り不安を取り除けるように努めています。
妊婦健診
妊婦さんの健康状態に変化はないか、赤ちゃんが順調に発育しているかなど、目安として24週頃までは4週間毎、24週頃から35〜36週までは2週間毎、35〜36週からは毎週行います。
初回は血液型、感染症、血算・血糖の血液検査、子宮頚癌検査、おりもの検査を行います。中期は血算・血糖、感染症の血液検査に加えて、クラミジア、おりもの検査を行い、後期で血算・血糖の血液検査とおりもの検査を行います。
毎回体重測定、血圧測定、検尿、超音波検査、内診を行います。専門外来は設けていませんが、必要があれば超音波専門医と周産期専門医(母体・胎児)の資格を持った産科医が、胎児の発育や状態を評価し、羊水量や胎盤、臍帯などを観察します。
また助産師が院内助産対象の方や時間をかけて助産師から話を聞きたい方を対象に、助産外来も行っています
早産対策
早産は起き始めてからの対策ではなかなか防止できず、約5%の方はできる限りの対応をしても早産になってしまいます。
早産の原因は細菌性腟症から絨毛膜羊膜炎へ進行し子宮が収縮して早産になる場合と、子宮の出口である子宮頸管の支えが弱く、子宮が大きくなるにつれて子宮頸管がゆるくなり子宮口が開いてきて早産になる場合があります。膣分泌物(おりもの)検査や子宮頸管長測定、陣痛計を使用し、早産を防ぐように努めています。
胎児心拍モニタリング
お腹の赤ちゃんが元気であれば、妊婦さんは胎動を感じます。胎動を感じれば、安心してください。ただ感じにくいことがあったり、客観的に判断するために、胎児心拍モニタリングで心拍数の変化と子宮の収縮を計測し、赤ちゃんが元気かどうかを観察します。
妊娠36週に入った方と予定日を過ぎた方、赤ちゃんの発育が気になる方、胎動が少ないあるいは感じにくい方などを対象にしています。元気がない赤ちゃんの場合には心拍数の変動が少なく、時として低下することがあります。
緊急対応に即応しなければならない場合も生じるため、大事な検査です。
本格的な陣痛が始まれば、ほぼ継続的に胎児心拍モニタリングで、赤ちゃんが元気かどうかを観察します。
助産師外来、マザークラス、母乳育児外来に関しては、『出産について』をご参照下さい。
小児科フォロー
小児科と連携をとって新生児のケアを行っております。
産後のこころの不調(産後健診受診の勧め)
妊娠・出産・育児は、女性にとって大きな喜びであるとともに、ホルモン状態や体調、周りの環境の変化が激しく起こり、こころの不調をきたす可能性のある出来事です。
お母さんのこころの不調は、育児に影響を与え、お子様の成長だけでなく、ご家族にも大きく関わってきます。メンタルヘルススクリーニングとして産後2週間、4週間の産後健診で、3つの質問票(育児支援チェックリスト、エジンバラ産後うつ病質問票、赤ちゃんへの気持ち質問票)を使って、助産師の問診(聞き取り)に答えていただき、こころの不調の早期発見のために活用しています。
そして支援が必要な方を継続的に支援してゆく体制を作っています。一人で悩まず、抱え込まずにお話しください。