最終更新日:2024/09/20

胸腺腫 胸腺摘出手術

胸腺

 胸腺はリンパ系の主要な器官で,Tリンパ球の成熟を促して生体の免疫機能の発達に関与します。左右の肺の間で、前後方向では胸骨と心臓・大動脈にはさまれる狭いスペースに胸腺は存在します。生後発育し思春期にピークを迎えますが、その後は退縮に転じ、急速に脂肪組織に置き換わって行きます。

胸腺腫

 胸腺腫は、胸腺の上皮細胞から発生するまれな縦隔腫瘍です。一般的に、悪性の腫瘍として扱われますが、胸腺腫の多くはゆっくりと大きくなっていき、直接まわりへ広がっていくことはあっても、離れた場所への転移は起きにくいとされます。
 早期の胸腺腫は被膜に包まれており、このような段階のものでは胸腔鏡やロボットを用いた手術の良い適応となります。一方、腫瘍が大きく、周囲の組織や臓器に広がっている場合は、しばしば開胸手術が必要となります。胸腺は心臓や大血管にもともと接しているため、進行期の胸腺腫では完全に切除するのが難しいことがあります。そのような場合、抗がん剤(±放射線療法)を用いた治療を先に行って、腫瘍を小さくしたところで外科的に切除する方法をとることがあります。
 また、胸腺腫の約4分の1は重症筋無力症を伴っており、そのようなケースでは胸腺を含めてその周囲の脂肪組織を広く切除します。
 胸腺がんも胸腺の上皮細胞から発生しますが、胸腺腫よりも悪性度が高く、離れたところに転移しやすい腫瘍です。

開胸手術

 上の図は従来の開胸法です。
腫瘍が大きい場合や周囲の組織・臓器に広がっているものが対象となります。
医療用のこぎりを用いて、胸骨を真ん中で縦に割って胸を開きます。腫瘍を胸腺組織を含む脂肪組織と一緒に切除します。

胸腔鏡手術

 上の図は胸腺腫に対する胸腔鏡手術を示します。
操作する空間を広げるために、胸の中に二酸化炭素ガスを注入します。胸腺組織は体の真ん中にあるため、完全に摘出するためには左右の胸にポート(小さな穴)を作って、腫瘍を胸腺組織を含む脂肪組織と一緒に切除します。ただし、小型の腫瘍では片側からのみで手術を行うこともあります。