IBD(潰瘍性大腸炎・クローン病)
IBDの患者さんは若年で発症する方も多く、現状では完治は困難であるため、長期にわたって治療を受けていただく必要があります。
IBDの特徴として、(1) 調子がよい状態であったにもかかわらず突然予期せぬことが起こること、(2) 同じ病気でありながら患者さん個々人の差が大きいこと、(3) 病気を抱えたまま就学や就職あるいは結婚や出産などの人生の大きなイベントを越えていかなければならないこと、などが挙げられます。消化器医であってもIBD診療に長けた医師が必ずしも多くないのは、このように病態が複雑であるため画一的な診断と治療で対応できないことも理由の一つです。IBDの診療は、患者さんの一生を考慮しながら、適切な時期に適切な治療を選択する必要があり、適切でない治療選択のためIBD患者さんの人生の質が低下することがあってはなりません。
では、当院のようなIBD診療を専門としている病院には問題がないでしょうか。当院では、IBDの患者さんの入院治療に関しては、消化器内科全体で、必要なときには消化器外科医も一緒に治療方針の検討を行ってきました。しかしながら、外来での治療は個々の医師に任されている場合も多く、外来担当医が不在の時に、患者さんに突然予期しないことが起きた時には治療経過の把握に時間を要することもありました。過去の有効であった治療あるいは今後の治療方針などをすべての医師が容易に把握し、外来担当医以外でも迅速に適切な治療を提供できる必要があると考えました。
この度、岡山大学病院でIBD診療に従事していた高橋索真医師が当院に着任しましたので、IBD データマネジャーに任命することといたしました。IBD データマネジャーは、当院にて加療中のすべてのIBD患者さんのこれまでの診療経過について把握し、診療の要約の作成と将来に大きな影響を及ぼす検査画像の選択と整理を行います。そして、消化器内科医師による今後の治療方針の検討と決定を行います。消化器内科全員で入院だけでなく外来での治療経過を共有することで、IBD患者さんに適切な時期に適切な治療を提案し、患者さんと話合いの中でよりよい治療を選択できればと考えています。
消化器内科 診療科長 稲葉知己
IBDデータマネージャーのご挨拶
IBD (炎症性腸疾患)データマネージャーを拝命致しました、髙橋 索真と申します。平成26年4月に香川県立中央病院 消化器内科に赴任致しました。前任地の岡山大学病院では、主にIBDの病態の研究、IBD患者さんの治療に従事しておりました。よろしくお願い申し上げます。
当院では現在、約 250名のIBDの患者さんが定期的に治療を受けられており、30年以上にわたる通院歴のある患者さんもいらっしゃいます。当院では2007年より電子カルテを導入し、診療科を超えて検査結果や手術記録を確認することができますが、電子カルテは情報量も多く、一人一人の患者さんに係る医師・スタッフも複数にわたることから、折に触れて重要な情報を分かりやすくまとめ、情報を共有化する必要があります。現在 私は電子カルテ導入前の紙のカルテも積極的に確認しながら、当院で治療を受けられているIBDの患者さんの発症からの経過、検査や手術などの情報をまとめる作業を行っております。
下記に、その一例を示します。
患者さんの今後の診療に、必ずや役に立つものと確信しております。個人情報の保護には万全を期しておりますので、どうぞ御理解いただければと存じます。
同時に、今後 外来を受診される患者さんには、待ち時間を利用して現在の腹痛・便通などの症状や、医師に聞いてみたいこと、将来のことで心配されていることなどを問診票に御記入頂き、診療に役立てていく予定となっております。
分からないことなどありましたら、お気軽にスタッフにお尋ね下さい。