診療内容
診療科長(部長)永野 拓也
肝臓内科では、現在4人の肝臓学会専門医と初期研修医により、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患を含む脂肪肝、肝硬変、肝細胞癌や胆管細胞癌等の肝腫瘍の診断と治療を行っています。
全国的にも新規の肝細胞癌の発生は減少傾向にありますが当院でも同じ傾向です。当院における肝細胞癌の治療は、肝癌のステージと肝予備能と患者背景に応じて外科と内科で治療方針を検討し行ってきました。内科ではこれまでは肝動脈化学塞栓療法(TACE)を年間約250回前後、ラジオ波凝固療法(RFA)を年間約100例前後の治療を行ってきましたが、新規肝細胞癌発生の減少、再発までの期間の延長、さらに分子標的薬と免疫チェックチェックポイント阻害剤と薬物治療の選択枝も増えたことでTACEとRFA症例数は減少傾向にあります。分子標的薬には内服剤ではソラフェニブ《ネクサバール》やレゴラフェニブ《スチバーガ》、レンバチニブ《レンビマ》、カボザンチニブ《カボメティクス》、注射製剤であるラムシルマブ《サイラムザ》、アテゾリズマブ《テセントリク》、ベバシズマブ《アバスチン》があり、当院ではこれまでに約250例近くの症例に投与しています。分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬は肝予備能が保たれていないと良好な効果が期待できませんので、肝癌進行度と肝予備能を考慮して肝予備能が保たれている時期にこれらの薬剤を開始することが重要です。よってTACE不応・不能・不適症例においては肝予備能が低下する前に薬物治療を導入しています。最近の肝癌診療の流れでは、肝予備能の保たれている症例において、切除不能、TACE不応・不能・不適、また焼灼術の適応がない場合は薬物療法がfirst lineとなっており、自己免疫性疾患などリスクが無い症例においてはアテゾリズマブとベバシズマブアバスチンの複合免疫療法で治療を開始する事が推奨されています。
肝疾患の評価、精査と治療に必要な画像検査には超音波診断装置、CT、MRI、血管撮影装置、PET-CTを用いています。超音波造影剤(ソナゾイド)による造影超音波検査や仮想超音波装置を用いることでより安全かつ正確にRFAが治療できるようになり、治療成績も上がってきています。新型のマイクロ波焼灼装置では焼灼径が40mm程度でほぼ球形の焼灼範囲が得られますので、ラジオ波治療では複数回の穿刺焼灼が必要であった大きめの病変にも1回の穿刺で治療が行えます。TACEとRFAの入院期間は当院の入院パスではそれぞれ8日間と5日間ですが、病勢、肝予備能と患者背景に応じて短縮・延長することがあります。また肝生検と腫瘍生検の入院パスは一泊二日です。
C型肝炎は内服薬だけで完治する時代となり、非代償期肝硬変(一部制限あり)まで駆除治療の対象となっています。肝炎助成制度を利用することが可能です。肝線維化が進んだ症例においてはウイルス駆除後にも発癌する例も存在しますので、画像検査と腫瘍マーカーでのフォローが必要です。
B型肝炎に対しては、ペグインターフェロン療法(PEG-IFN)や核酸アナログ製剤で治療を行っており、良好な治療成績を得ています。核酸アナログで肝機能が正常化し、HBV-DNAが陰性化しても肝細胞癌が出現することも明らかとなってきており、B型肝炎の治療の最終目標はHBs抗原の消失です。HBs抗原を陰性化できる薬剤が登場するまでは、現在使える核酸アナログとPEG-IFNで治療を行うことになります。またB型肝炎再活性化については、院内で行ってきた注意喚起が浸透し当院ではHBVが再活性化することなく化学療法や免疫抑制剤治療を遂行できています。HBs抗原が陽性の場合B型肝炎を発症する可能性がありますが、HBs抗原が陰性の場合でも、HBs抗体・HBc抗体のいずれかが陽性の場合は、HBs抗原陽性例と同様にB型肝炎を発症する可能性がありますので、定期的に肝機能とHBV-DNAのチェックが必要となります。顔面神経麻痺や突発性難聴などステロイド治療が必要な疾患においてもステロイド投与期間が2週間を超える場合は同様の扱いが望ましいとされています。
最近はお酒を飲まない人の脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が問題となっています。2024年からは、NASHという名称からMASHに変更となりました。当院においても新規の肝細胞癌の約半数が脂肪肝炎を疑う肝疾患からであり、これからも線維化のある脂肪性肝疾患のフォローが重要です。MASHの診断には肝生検が必要ですが、ファイブロスキャンで肝硬度と脂肪量を測定することにより、非侵襲的に線維化のある脂肪肝であるかどうかの鑑別ができますので、脂肪肝で肝機能異常を有する方がおられましたら是非ご紹介いただければ幸いです。また、MRIで肝脂肪量を評価するMRI-PDFFも行っています。10日間の入院で脂肪肝についての学習・生活指導を行う脂肪肝パスを用いた入院も実施しています。
平成20年度より香川県の肝疾患診療連携拠点病院に指定されており、肝疾患の診断や治療に関する情報を地域の専門医療機関と共に協議していく場を設け、かかりつけ医や地域住民を対象とした研修会や講演会の開催を行っております。2011年度より肝炎相談支援センターを開設し、肝疾患に関する知識の普及や相談業務とともに、最近は出張肝臓病教室、出張無料肝炎検診も行っておりますので、気軽にご相談いただければ幸いです。
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実績
C型慢性肝炎の治療は、ペグインターフェロン(Peg-IFN)からウイルス増殖に重要な働きをもつHCV蛋白を直接阻害する経口薬である DAAs(direct acting antiviral agents)に置き換わってきました。院外においてHCV患者さんの掘り起こし、また院内検査でHCV陽性と判定された患者さんで駆除適応があれば治療を行っています。治療件数は減少して、2023年度には16例に治療を行っています。治療が難しい患者さんがおられれば気軽にご紹介いただき受診していただければと考えています。また、B型肝炎に対する核酸アナログ製剤の投与症例は活動性肝炎とHBV再活性化予防例に2023年度には12例に治療を行っています。肝細胞癌に対する治療ですが、新規発生数が減少したことと治療の選択肢が広がってきたことで肝動脈化学塞栓術と経皮的ラジオ波焼灼術治療件数は減少していますが、2023年の実績数は肝動脈化学塞栓術101例、経皮的ラジオ波焼灼術の症例数は年間32例でした。県下ではトップクラスの症例数となる治療を行っており、拠点病院としての役割を果たしてきています。
診療予定表
午前
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 |
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妹尾 知典(完全予約) | 髙口 浩一 | 髙口 浩一 | 永野 拓也 | 筒井 朱美 |
午後
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 |
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妹尾 知典(完全予約) | 永野 拓也 | ー | 永野 拓也 | 筒井 朱美 |
※医師が学会等出張の場合、休診となることがあります。
○受付時間は午前8時15分~午前11時
(再来受付機 予約診療:午前8時15分~午後4時
予約外診療:午前8時15分~午前11時)
12月18日 (水) 肝臓内科 休診 予約のみ対応します
12月27日 (金) 肝臓内科 休診
スタッフ紹介
たかぐち こういち
髙口 浩一
ながの たくや
永野 拓也
つつい あけみ
筒井 朱美
せのお とものり