もやもや病とは?
もやもや病はわが国で最初に発見された疾患であり、小児の脳卒中の原因として代表的なものである。 その疾患の本質はウィリス動脈輪の進行性の閉塞であり、もやもや血管はその代償するために発達した側副路をさす。
発生率は人口10万に対し1年間0.35~0.5人程度であり、男女比は1:1.8で女性に多く、 好発年齢は10歳以下と40歳前後の2峰性のピークを有する。家族発症は全体の10%程度にみられ遺伝的関与が指摘されている。 しかし、どのような遺伝子が問題かははっきりしていないし、遺伝する可能性に関しても、どの程度高いかは不明である。
発症形式は主に虚血型と出血型とにわかれ、小児例は一過性脳虚血発作や脳梗塞などの虚血症状がほとんどであるのに対し、 成人例はほぼ半数が脳出血で発症する。
代表的症状
小児のもやもや病でもっとも特徴的な症状は、過呼吸時によって誘発される一過性の脱力発作である。 典型的な運動麻痺ないし脱力は数分から数十分継続した後に改善する。他、頭痛、不随意運動、痙攣発作などで発症する場合もある。 脳梗塞で発症した場合はその部位に応じた運動麻痺や失語等といった巣症状の他、 精神発達遅延、知能低下や学習障害が前面に現れることも多い。年齢的には5歳以下の乳幼児で脳梗塞発症が多く、重篤な場合が多い。
成人のもやもや病は小児と異なり脳出血で発症することが多く、出血の部位により症状が異なる。 運動麻痺や言語障害といった巣症状の他、意識障害、けいれん、一過性の頭痛などの症状を呈する。 重篤度は出血の部位に加え出血の程度によって異なるが、一般的に虚血例に比べ出血例に重症例が多い。 虚血発症の場合は基本的に小児と変わらない。
診断方法
もやもや病の診断には脳血管の状態を評価することが必要である。現在、脳血管を評価する検査として、MRA、脳血管撮影等の方法があり、どちらかの方法で確定診断が可能である。これらの検査において (1)頭蓋内内頚動脈終末部、前および中大脳動脈近位部に狭窄または閉塞がみられる。(2)その付近に異常血管網が動脈相においてみられる。(3)これらの所見が両側性にあることが特徴である(図1、 2)。
手術など治療を決定する上では詳細な血管の評価、副側路の発達の評価に脳血管撮影が極めて有用であり、また虚血の程度の判定にはSPECTなどの脳血流検査が必要となる。
治療方法
もやもや病は脳動脈の閉塞性変化が病気の本質であるため、不足する脳血流を補うための外科的治療、 すなわち血行再建術が一般的に行われる。頭痛や軽微なけいれん発作のみの場合はそれに対する対症的な薬物療法を行うこともある。
外科的血行再建術は間接的血行再建術と直接的血行再建術があり、それぞれの特徴を生かして、 患者の状態や病気の程度により上記術式を組合わせて行う(図3)。
間接的血行再建術は血流が豊富な組織を脳に接着することで、 その組織から脳へ新たな新生血管が発生することを期待する方法であり、主に硬膜、側頭筋、浅側頭動脈が用いられる。 広範囲の血流の改善が期待できる反面、新生血管の発達に数ヶ月単位の時間を要する。主に小児症例に用いられる。
直接的血行再建術は頭蓋外血管を頭蓋内血管に直接吻合することで血流の改善を期待する方法であり、 主に浅側頭動脈ー中大脳動脈吻合術が行われる。血管径の太い成人症例に適している。
良好な血行再建ができれば症状は1年前後で軽快してくるが、既に脳梗塞や脳出血など完成された脳病変を有する場合は、 症状の進行を予防するにとどまり、既存の症状の改善の可能性はない。
脳出血予防に対する外科治療の有効性は、多くの論文で述べられている。 現在、これをさらにこれをさらに科学的な立証をするために、外科治療した患者さんと行わなかった患者さんとの再出血率を検討する研究が進行している。