では未破裂脳動脈瘤がみつかったらどうすればよいのでしょう?
現在動脈瘤の治療は、
- A: 慎重に経過を追うという方法
- B: 開頭によるクリッピングといわれる手技
- C: 脳の血管の内側から動脈瘤はその本血管にコイルやバルーン・ステント等をつめる血管内手術があります(図4)。
経過を追う場合、上記にあるように瘤が拡大し破裂したり、また脳・神経の圧迫をきたして障害をきたす場合もあるので、慎重な経過観察が必要です。瘤の大きくなる率や頻度は明らかとなっていませんが、最低年に1度、または6ヶ月に一度は瘤のサイズの経過を追われることが推奨されます。また症状をきたした瘤は極めて破裂しやすいと考えられており迅速な対応が必要と考えられています。
開頭術によるクリッピングはチタンやステンレスでつくられた小さな洗濯鋏のようなクリップで動脈瘤の首の部分を閉塞し瘤への血流をせきとめる方法です。この方法は20年来おこなわれてきており長期の効果も実証されています。
血管内手術はここ10年来発展してきた技術ですが、心臓血管における治療とも同期して非常に進歩の早い分野です。頭を切らずに動脈瘤をつめることができること等の利点から日本、欧米でも急速に普及し始めています。その一方で不十分な閉塞に終わった症例その他の10%程度で再治療が必要と報告されており、慎重な経過観察が重要です。また未破裂脳動脈瘤に対する血管内治療の長期的予後については確実な結果はまだ発表されていません。
大きな動脈瘤はどちらの治療法でも困難な場合もあり、親血管の血流を残すためにバイパスをして親血管そのものを塞ぐ手術などが行われることがあります。今後は血管内に補強をするステントの技術などが進歩しさらに低い侵襲で治療がおこなわれるようになると信じられています。
どのような治療にも合併症の危険性があります。開頭術クリッピングによる合併症として、脳内出血や、血管の閉塞による脳梗塞、手術中の脳の損傷、感染症、痙攣や美容上の問題などが報告されています。重篤な合併症は5~10%程度、死亡する可能性は1%程度と報告されています。また脳動脈瘤の血管内治療の合併症は、コイルの逸脱や手技中の血管閉塞、瘤の破裂、血腫の形成などが挙げられます。重篤な合併症は5~10%程度と報告されています。
治療方針の関しては、十分に医師と相談して、治療の目的と危険性についてよく理解して、ご自身の生き方に照らし合わせて決定することがとても重要です。もし担当医の説明により決めかねる場合にはセカンドオピニオンを求めるのも良いほうです。
未破裂脳動脈瘤に要する費用は患者さんの合併疾患や、動脈瘤の大きさや形状、部位、治療の困難さなどにより多少の変動はありますが、開頭手術でも、血管内治療でも総額200万円前後(その3割負担)と計算されています。
図4: 動脈瘤治療の図