最終更新日:2022/03/15

担当医(消化器外科医編)

外科で診察する骨盤機能障害として1.便秘 2.便失禁 3.直腸脱 4.慢性肛門・直腸痛があり、各症状に応じた治療を行なっています。

1.便秘:一般的には3、4日間以上有効な排便がない状態

1. 便秘の種類

  1. 弛緩性便秘:大腸の運動が弱く、便を肛門まで運べない、もしくは時間を要する便秘
  2. 直腸性便秘:直腸が便意を感じない(鈍感)直腸が便を排出できない(機能性・形態性)ことで起こる便秘
  3. 痙攣性便秘:大腸の運動をコントロールする神経機能が故障し、正常に大腸が機能しなくなる便秘

2. 検査方法

  1. 詳細な問診:症状、内服薬、既往症など
  2. 診察:腹部・直腸肛門を含めた全身の診察
  3. その他:大腸癌や炎症性疾患などが疑われる場合には腹部CT,MRI,大腸内視鏡検査を行なう場合があります

3. 治療

  1. 生活指導:食事・排便方法などの教育
  2. 薬物療法:寒下剤、浣腸、腸蠕動促進薬の予約
  3. 手術療法

2. 便失禁

1. 便失禁の種類

  1. 漏出性便失禁:便意を感じることなく気がつかないうちに便が漏れる
  2. 切迫性便失禁:便意を感じるがトイレまで我慢できずに漏れる
  3. 混合型便失禁:漏出性便失禁と切迫性便失禁が混在した状態

2. 検査方法

1. 詳細な問診:症状(便失禁の頻度、便もレンも内容、オムツ(パッド)の使用、日常生活への影響など、)既往症、出産暦など

2. 診察:直腸肛門(肛門括約筋筋力)機能を含めた、全身の診察。

3. 直腸肛門内圧測定:肛門括約筋のしまり具合を測定する

直腸肛門内圧測定:肛門括約筋のしまり具合を測定する 写真

4. 肛門超音波検査:出産に伴う、肛門括約筋損傷の鑑別目的

肛門超音波検査:出産に伴う、肛門括約筋損傷の鑑別目的 写真

5. 直腸バルーン知覚検査:直腸の便意間隔を測定する目的

直腸バルーン知覚検査:直腸の便意間隔を測定する目的 写真

6. その他:軽度の便失禁では排便造影を行うことがあります

3. 治療

  1. 生活指導(食事・排便指導)骨盤底筋体操指導
  2. 薬物治療(便通異常改善薬・腸蠕動抑制薬の投与)
  3. アナルプラグ
  4. 手術療法(括約筋修復術、肛門括約筋再建術、人工肛門造設術等)

3. 直腸脱・直腸瘤

1. 種類

  1. 直腸脱:肛門から筋層を含む直腸の全層が脱出する
  2. 直腸粘膜脱:肛門から直腸粘膜のみ脱出する
  3. 直腸瘤:肛門から脱出せず、前方(膣後壁)へ直腸が突出する

2. 検査方法

  1. 詳細な問診:症状(脱出頻度、便失禁の有無、出血、排便困難の有無など>、既往症、出産暦など
  2. 診察:直腸指診による直腸瘤ならびに、肛門括約筋筋力の確認、怒責(いきみ)時における、直腸脱の確認
  3. 直腸肛門内圧測定:肛門括約筋のしまり具合を測定する目的
  4. 排便造影:直腸瘤の確認、隠れた骨盤機能血管〈S状結腸瘤や小腸瘤〉の確認目的
  5. MRI.CT検査:骨盤底弛緩に伴う疾患(直腸瘤、直腸重積、S状結腸瘤、小腸瘤、膀胱脱、子宮脱〉が疑われる場合に実施する場合があります。

3. 治療

  1. 骨盤底筋体操指導
  2. 手術治療
    直腸脱:会陰式根治術〈肛門側から脱出直腸を治療)腹式根治術(腹腔内から直腸を吊り上げる手術)
    直腸瘤:経膣的根治術(膣後壁を、縫縮する方法)経肛門的根治術(肛門から突出する直腸を縫縮する方法)