最終更新日:2022/08/05

内視鏡を用いた傷の小さな手術-胸腔鏡下手術

開胸手術の時代

従来、肺がんの手術は大きな傷(開胸)で行われていました。20-30cm程の皮膚を切開し、筋肉を切断し、さらに肋骨の間を大きく切り開いて、肺を切除していました。

胸腔鏡手術の導入と発展

当科では、1998年頃より肺がんの治療に胸腔鏡手術を導入し、以後改良を重ねてきました。
2003年には、早期がんの症例に対して、完全胸腔鏡下肺葉切除術を中四国地域において最も早く開始しました。現在では内視鏡手術に練達した呼吸器外科専門医によるチーム型胸腔鏡手術の体制を確立しています。

胸腔鏡手術の利点

傷が小さく筋肉や神経に対する損傷を最小限にとどめるため、開胸手術に比べて術後の痛みは軽く、回復も驚くほど早く、手術1週間後には退院することができます。

胸腔鏡手術の方法

以下の二つの方法があります。

・完全胸腔鏡手術(純粋な内視鏡手術)
・胸腔鏡補助下手術(小開胸+内視鏡手術)

完全胸腔鏡手術

当科で主に行われる手術方法です。小さな穴(ポート)を通して、胸の中を完全に内視鏡映像だけを見ながら手術を行います。

完全胸腔鏡手術 イラスト
  • 手術の方法:
    胸に3、4カ所の穴(ポート)を作ります。ポートの一つから胸腔鏡を挿入し、映像(モニター)を見ながら、内視鏡手術用の器具を使って手術を行います。肺を切除した後は1カ所のポートを3-4cm程の長さに広げて、そこから専用の袋に回収した肺を取り出します。
  • 傷が小さく痛みが少ない:
    術後の痛みは軽く、回復も早いです。通常の肺葉切除術であれば手術後1週間以内での退院となります。退院後は多くの場合、かかりつけ医と連携して診療しますので遠方の方でも心配ありません。
  • 手術は細心の注意が必要:
    国内の呼吸器外科手術の集計では、手術中の大出血が年間100件以上起こっています。特に完全胸腔鏡手術では傷が小さいので、細心の注意を払って操作を行うことが要求されます。

小開胸併用による胸腔鏡補助下手術

内視鏡手術導入時より多くの施設で行われてきた方法です。開胸と内視鏡とのハイブリッド手術といえます。

  • 手術の方法:
    執刀医は主に7cmほどの開胸創から直接胸の中をのぞき込んで手術を行います。つまり、開胸手術と胸腔鏡手術を組み合わせた方法と言えます。
  • 直接胸の中を見ながら手術できる:
    直接胸の中をのぞき込むことができるため、開胸手術に近い感覚で手術できます。また、開胸用の手術器具を使用することができます。
  • 小さな開胸手術:
    胸の中をのぞき込むためには、ある程度の大きさの開胸が必要です。その分、痛みは強くなりますので、術後の痛み対策が大事になります。
ハイブリッド手術