最終更新日:2022/03/15

肝疾患診療連携拠点病院

平成20年4月より肝炎治療に対する医療費の助成制度が始まり、当院は香川県の肝疾患診療連携拠点病院となっております。 B型、C型肝炎や肝硬変、肝細胞癌の患者さんの診断、治療を精力的に行っております。 また肝疾患専門医療機関や地域の先生方へ肝炎助成制度や肝疾患の治療法の情報提供にも力を注いでおります。 肝疾患診療連携拠点病院として県や医師会、新聞社、 製薬メーカとタイアップして地域の先生がたや市民の皆様への肝疾患患者の発見や治療の必要性の啓蒙活動も積極的に行ってきております。

肝炎治療(インターフェロン治療、核酸アナログ製剤治療)に対する医療費の助成

平成20年度からB型・C型肝炎のインターフェロン治療に対する医療費助成を開始し、平成21年度からは、 一定の条件を満たした方には助成期間の延長を認める等の運用変更が行われています。 また平成22年度からは、自己負担限度月額の引下げや、核酸アナログ製剤治療を助成対象に追加するなど、 より利用しやすい制度となっています。また新しい治療法である3剤併用療法に関しても助成制度が認められおり、 多くの患者さんに助成申請をおすすめしています。ご不明な点は肝炎相談センターまでご連絡下さい。

肝疾患診療連携拠点病院

肝疾患診療連携拠点病院の機能は以下の5つです

  1. 医療情報の提供
  2. 都道府県内の専門医療機関等に関する情報の収集や提供
  3. 医療従事者や地域住民を対象とした研修会・講演会の開催、相談支援
  4. 専門医療機関等との協議の場の設定
  5. その他、肝がんに対する集学的治療が実施可能な体制が必要である

C型慢性肝炎

C型慢性肝炎はC型肝炎ウイルスが感染することにより起こる病気です。 現在日本には150万人程度の患者さんがいるといわれております。 C型肝炎ウイルスは血液を介して感染することが知られており、輸血や血液製剤、刺青、 ピアス等にて感染することが知られています。C型慢性肝炎は感染していてもほとんど症状がなく、 知らない間に少しずつ進行して行き、肝硬変や肝細胞癌に進行していく恐ろしい病気です。 C型肝炎の診断は簡単な血液検査のHCV抗体という検査をすることでわかります。 過去に輸血を受けたことがある患者さんや20年以上前に大きな手術を受けた患者さん、 また出産時に大量出血をした患者さんはぜひHCV抗体の血液検査を受けてください。 まだ半数近い70万人程度の方が感染に気付いていないといわれております。 一般の検診ではHCV抗体を測定していないことも多いようです。 検査は地域の保険所や病院、医院クリニックでも受けることができます。

現在のC型慢性肝炎の治療の治療成績

現在当院でのC型慢性肝炎のペグインターフェロンリバビリン療法はのべ550症例を超えており、 県下でもまた中四国地方でも1-2位を争う症例数を経験してきております。 従来のペグインターフェロンリバビリン療法でC型慢性肝炎治療を行いますと、 効きやすい2型の患者さんでは8-9割の患者さんが治癒しますし、 難治例の1b高ウイルス量の患者さんでも5割前後の治癒を得ることができます。 また2011年11月と2013年9月2014年11月に認可され使用できるようになった内服薬であるプロテアーゼ阻害剤 (テラプレビル、シメプレビル、バニプレビル)をペグインターフェロンリバビリン療法に追加すると 難治例である1型高ウイルス量の患者さんでも8割以上のC型肝炎の患者さんが治癒する時代となっており、 当院でも3剤併用療法を受けた患者さんの8割以上の患者さんがHCV-RNAが陰性化しています。

今後の新しい治療によるC型慢性肝炎の治療予測

また2014年9月に発売された内服薬だけの抗ウイルス薬であるダクラタスビル+ アスナプレビル療法は難治性の1型高ウイルス量の患者さんにも3剤併用療法に迫る治療効果があるとされています。 またインターフェロン製剤に比べて副作用も少なく、 従来のペグインターフェロン+リバビリン療法で治らなかった患者さんでもウイルス学的治癒が期待されます。 また今後も2型C型肝炎の患者さんに対する内服治療や。 1型の患者さんにもより短い治療期間(12週間)で治療効果が得られる新薬も登場する予定ですので、 治療を躊躇されている患者さんは是非地域の先生と相談の上受診していただければと考えております。

肝細胞癌

肝細胞癌は日本の癌の死亡数の男性で3位、女性で4位を占める癌であり、 全国で毎年3万人を超える患者さんが亡くなっています。肝細胞癌の原因の70%以上がC型肝炎ウイルスの感染者であり、 残りの10%前後がB型肝炎ウイルス感染者であるといわれております。当院は県の肝疾患拠点病院、 がん診療連携拠点病院としての役割を果たすために、 インターフェロンの地域連携パスとともに肝細胞癌のがん診療地域連携パスも利用して地域の先生方との医療連携を進めております。 多くの患者さんが当院とかかりつけ医の間で診療内容を共有化して、 より効果的に肝疾患の患者さんの診療や治療ができるように心がけております。

経皮的ラジオ波焼灼術

経皮的ラジオ波焼灼術は肝臓の中にできた腫瘍(癌)に細い針を超音波装置(エコー) で見ながら刺して熱を発生する装置につないで患部を高熱にして焼ききる治療法です。 現在日本中の施設で肝細胞癌の治療の約4割程度に行われている治療法であり、 手術に比べてからだに対する負担が少なく治療効果の高い治療法です。 当院では2000年ごろからこの治療法を開始し、現在肝細胞癌に対する経皮的ラジオ波焼灼術は県下で1番多くの症例に行っており、 さまざまな患者さんの治療を行っております。最新のフルデジタル超音波検査装置を使用し、 プローベも肝細胞癌を探しやすく見えやすいものを使用し治療しています。 またCT画像を参考にて見えにくい肝細胞癌も的確に治療できる装置(RVS) を配備しておりより正確に回数を少なく治療し患者さんの負担軽減に努めています。 現在年間毎年100-150例の経皮的ラジオ波焼灼術を行っており累積では1000例を超えております。

肝動脈塞栓術

肝動脈塞栓術は足の付け根の動脈(大腿動脈)からカテーテルという細い管を使用して肝臓に行く動脈のなかにすすめて造影検査をして、 肝細胞癌を栄養する血管を捜してその栄養する血管から抗がん剤と塞栓物質を注入して肝細胞癌をやっつけてしまおうという治療法です。 当院では年間250件を超える症例に治療を行っております。 肝動脈塞栓術と経皮的ラジオ波焼灼術を組み合わせることにより、より効果的な治療もできる患者さんもいますし、 カテーテルの先に小さな風船をふくらますことにより、より多くの薬を注入できることになり(B(バルーン)-TAE)、 今まで治療効果の少なかった肝細胞癌の治療もできるようになっています。 最近では新しい塞栓物質であるマイクロスフェア(へパスフェア、DCビーズ)等も使用して、より効果的なTAEができるよう心掛けています。

B型肝炎

B型慢性肝炎、肝硬変は、B型肝炎ウイルスが感染することにより起こる病気です。 多くはB型肝炎ウイルスに感染した母親から出産時に感染して、B型肝炎ウイルスを持っているが、 発病していないキャリアという状態になります。 その後20歳前後より慢性肝炎を発症するようになります。 90%の患者さんが、ウイルスの量が少なくなり肝炎は沈静化するといわれていますが、 10%前後の方がその後慢性肝炎が持続し、肝硬変、肝細胞癌に進展していきます。 以前はB型肝炎を治療するのはインターフェロンしかありませんでしたが、 2000年以降に核酸アナログ製剤という内服のお薬が使用できるようになり、飛躍的に治療効果が良くなってきております。

肝炎助成制度

B型慢性肝炎、肝硬変患者さんに対しては、2008年より始まった肝炎助成制度によってインターフェロン製剤により 治療の患者さんの負担が軽減されました。それ以降、B型慢性肝炎患者さんに対するインターフェロン療法を行った患者さんは 当院ではのべ40例程度になっております。 また以前よりB型肝疾患患者さんに対する核酸アナログ製剤(ゼフィックス、ヘプセラ、バラクルード、テノゼット等) の投与は積極的に行ってきておりましたが、 2010年より核酸アナログ製剤に対する肝炎助成制度も始まり、 現在までに150例を超える患者さんに核酸アナログ製剤の投与を行っており、肝炎の沈静化や、 肝発ガンの抑制にもつながっているものと考えられます。

またペグインターフェロンも肝炎助成制度で助成されることになり、これまでのインターフェロンで効果のなかった患者さんも再度ペグインターフェロンで治療が可能となっています。

核酸アナログ製剤

B型肝炎ウイルスの増殖抑制し肝炎を沈静化させる画期的なお薬です。1日1回内服することにより、 ほとんど副作用なしにB型肝炎を沈静化することができます。ただ内服しだすと、長期間内服しなくてはならず、 35歳以下の患者さんにはインターフェロンを第一選択の治療とすることが推奨されております。 当院では約150名に対して核酸アナログ製剤の投与を行っており良好な治療成績をおさめております。 また長期間核酸アナログ製剤で治療を受けた患者さんの中には、肝臓内のB型肝炎ウイルス(HBV-DNA)量が減少してきており、 治療を中止できる例も少ないながら出てきています。 また急に中止した場合には肝炎が再燃して肝機能が上昇する患者さんもいますので、 ペグインターフェロンを併用して中止する方法も最近では試みられています。 また2014年5月よりあらたな核酸アナログ製剤であるテノフォビル(テノゼット)が、発売され、治療の選択肢が増えました。 従来の核酸アナログ製剤であるゼフィックスやバラクルードに耐性ができ効果がなくなった患者さんにも治療効果が期待されます。 もしお困りの方があれば是非受診ください。

またテノフォビルの次の核酸アナログ製剤についても現在当院で治験を施行中です。 治療に困られている患者さんがおられましたら、主治医の先生と相談の上紹介いただければ幸いです。